2007年10月4日、ムコ多糖症II型治療薬イデュルスルファーゼ(商品名:エラプレース点滴静注液6mg)が製造承認を取得した。10月17日に薬価収載され、同日付けで発売されている。

 ライソゾーム病の一種であるムコ多糖症は、先天性の難治性疾患である。ライソゾーム酵素が遺伝的に欠損することで、分解されるはずの糖脂質等の物質が体内に蓄積し、その結果、臓器障害や骨格障害などを呈する。ムコ多糖症にはI型からVII型(V型は欠番)まであり、患者数は日本国内に数百人と推定されるが、中でもII型は100〜150人程度と最も多い。

 ムコ多糖症II型はハンター症候群とも呼ばれ、イズロン酸-2-スルファターゼI2S)の先天的欠損により精神運動発達遅延、舌の肥大、難聴、呼吸不全、閉塞性無呼吸、肝脾腫大、心臓弁膜症、関節可動域の制限、骨格変形および高度の低身長などの症状が発現する。そして、この先天的疾患はX染色体劣性遺伝病であり、原則的には男児のみに発症することが判明しており、2〜4歳ごろまでに典型的な症状が発症し、多くの患者は20歳前に死亡する。

 従来、ムコ多糖症II型の治療は、個々の症状に対する対症療法が中心であり、病態の進行を阻止する方法はなかった。近年、根本治療として、骨髄移植など造血幹細胞移植が試みられているが、治療成績にバラツキがある上、重篤な副作用で死亡する例も報告されていた。

 今回承認されたエラプレースは、遺伝子組み換え技術を使ってヒト線維芽細胞に産生させたI2S蛋白である。米国では2006年7月、EUでは2007年1月に承認されている。日本では、2006年12月14日に希少疾病用医薬品に指定され、2007年1月に承認申請が行われた。そして、日本人患者を含む欧米での臨床試験データを基に優先的に審議され、今回のスピード承認となった。

 今後、エラプレースが使用可能となることで、これまで有効な治療法がなかったムコ多糖症II型患者の諸症状を改善し、さらに進行を抑制することも期待できるとして、専門医や患者の家族から期待が集まっている。ただしエラプレースは、造血幹細胞移植に比べるとはるかに安全性の高い治療法ではあるが、海外の臨床試験では薬剤投与による重篤な過敏反応(呼吸窮迫、低酸素症、低血圧など)の発現が認められている。このことに関しては、事前に患者や家族にしっかりと説明し、投与中には患者の観察を十分行うなど注意が必要である。