「フラジール内服錠」の添付文書(2007年8月改訂・第7版)より。

 2007年8月23日、抗トリコモナス薬メトロニダゾール(商品名:フラジール内服錠)に「胃潰瘍・十二指腸潰瘍におけるヘリコバクター・ピロリ感染症」の適応が追加され、同時に「用法・用量」と「適用上の注意」も改訂された。具体的には、メトロニダゾールを、アモキシシリン、プロトンポンプ阻害薬とともに7日間連続投与する除菌法である。ただし、ピロリ除菌での使用においては、従来の「3剤併用療法」が不成功だった場合(2次除菌)に限定されている。

 ヘリコバクター・ピロリ(H.ピロリ)は、ヒトの胃内に存在する細菌の一つであり、胃潰瘍・十二指潰瘍などの消化性潰瘍の発症に深く関与していることが確認されている。このことから現在、消化性潰瘍治療では、H.ピロリの除菌療法が主体となっており、日本でも2000年に、プロトンポンプ阻害薬、アモキシシリン(商品名:サワシリン、パセトシンほか)、クラリスロマイシン(商品名:クラリス、クラリシッドほか)の3剤を使用する「3剤併用療法」が保険適用され、現在では広く3剤併用療法による除菌療法が実施されている。

 しかしその後、クラリスロマイシン、アモキシシリン、プロトンポンプ阻害薬による除菌療法(1次除菌療法)では、10〜20%程度で除菌が失敗することが明らかになり、主にクラリスロマイシン耐性菌の増加がその原因とされた。そこで、1次除菌不成功例に対する2次除菌において、クラリスロマイシン以外の抗菌薬を使用する方法が模索され、国内外の試験でメトロニダゾールが有効であることが明らかになった。こうしたことから、2003年に改訂された日本ヘリコバクター学会の「H.ピロリ除菌療法ガイドライン」では、当時、保険適用されていなかったにもかかわらず、2次除菌療法にメトロニダゾールの使用を推奨する記載が追記された。

 その後、2005年7月に日本ヘリコバクター学会が、H.ピロリの2次除菌療法の保険適用に関する要望書を厚生労働省に提出。2006年には、関連製薬会社9社が共同で、H.ピロリの2次除菌療法として、メトロニダゾールを使った3剤併用療法の「公知承認」を申請した。公知承認とは、その適応が医学的に公知のものであるとして、海外における承認状況や国内外の公表文献等を根拠として申請を認め、承認するものである。

 メトロニダゾールは、H.ピロリを含めた微生物体内のニトロ還元酵素系の反応によって還元され、ニトロソ化合物(R-NO)に変化する。このR-NOが殺菌作用を示すといわれている。また、反応の途中で生成したヒドロキシラジカルがDNAを切断し、DNAらせん構造の不安定化を招くことも抗菌作用を示す機序の一つと考えられている。

 なお、メトロニダゾール服用中に飲酒すると、腹痛、嘔吐、ほてり等が現れることが従来から報告されている。これは、メトロニダゾールが、アルコールの代謝過程におけるアルデヒド脱水素酵素を阻害し、血中アセトアルデヒド濃度を上昇させるためである。メトロニダゾールによるH.ピロリ除菌を行っている期間中は、飲酒を避けることを患者に指導する必要がある。