2007年7月31日、緑内障・高眼圧症治療薬のトラボプロスト(商品名:トラバタンズ点眼液0.004%)が製造承認を取得した。薬価収載後に発売される見込みである。トラボプロストは、プロスタグランジンF2αPGF2α)誘導体であり、房水流出経路のうち、ぶどう膜強膜流出経路からの房水の流出を促進することで、眼圧降下作用を発揮する。承認された適応は「緑内障、高眼圧症」である。

 緑内障は、眼の房水の流出障害を主因とする疾患であり、(1)房水の流出経路である隅角が塞がって眼圧上昇を来す「閉塞隅角緑内障」、(2)隅角は開いているがその先の流出経路である線維柱帯が目詰まりを起こして流れが悪くなる「開放隅角緑内障」――に大別される。閉塞隅角緑内障は、急激な眼圧上昇により一般に眼痛、視力障害、吐き気などの自覚症状を伴うが、開放隅角緑内障は自覚症状が乏しく、気付かないうちに視神経障害が進行してしまう場合がある。また、眼圧は正常範囲内であるが、緑内障の所見(眼底の視神経乳頭の陥凹など)が認められる「正常眼圧緑内障」の存在も明らかになっている。

 いずれのタイプの緑内障も、早期に発見して治療を開始し、視神経障害の進行を抑制することが目標となる。薬物療法では、点眼薬が主体である。具体的には、マレイン酸チモロール(商品名:チモプトール、リズモン)などのβ遮断薬、ニプラジロール(商品名:ハイパジールほか)などのαβ遮断薬、塩酸ドルゾラミド(商品名:トルソプト)などの炭酸脱水酵素阻害薬、イソプロピルウノプロストン(商品名:レスキュラ)やラタノプロスト(商品名:キサラタン)のプロスタグランジン関連薬がある。中でも、最近では、安全性と強力な眼圧降下作用を兼ね備えたプロスタグランジン関連薬の使用が増えている。

 今回承認されたトラボプロストは、ラタノプロストと同じPGF2α誘導体である。イソプロピルエステル型プロドラッグとして角膜通過の際にエステラーゼにより加水分解されて、活性代謝物のトラボプロスト遊離酸となる。この活性代謝物が、プロスタグランジン受容体のサブタイプの一つで、眼圧降下作用に密接に関連するFP受容体に選択的に作用する。トラボプロストは、2007年1月現在、世界101カ国で承認されている。

 また、トラバタンズ点眼液は、プロスタグランジン製剤では初めて、防腐剤の塩化ベンザルコニウム(BAK)を含まないことも特徴である。塩化ベンザルコニウムなどの防腐剤は、角膜上皮に障害を与えたり、結膜に悪影響を及ぼすことが報告されている。

 副作用は、承認時までに外国人を対象にした臨床試験で22.1%の副作用発現率が確認されている。主な副作用としては、眼の充血・掻痒感・不快感・異物感・乾燥、眼痛、角膜炎などが認められている。また、同じPGF2α誘導体のラタノプロストと同様に、頻回投与により眼圧降下作用が減弱する可能性があるので、1日1回を超える投与は避けるように患者に指導する必要がある。

【訂正】9/14に以下の点を訂正しました。
・タイトルを「防腐剤を含有しない…」から「BAKを含有しない…」に書き換えました。トラバタンズ点眼液は、本文中にもある通り、防腐剤の塩化ベンザルコニウム(BAK)を含有していませんが、ホウ酸/ソルビトール存在下で塩化亜鉛が示す保存効果を利用しています。