2007年7月31日、麻酔用筋弛緩薬のロクロニウム臭化物(商品名:エスラックス静注1%)が製造承認を取得した。薬価収載後に発売される見込みである。適応は「麻酔時の筋弛緩、気管挿管時の筋弛緩」である。

 筋弛緩薬には、「中枢性筋弛緩薬」と「末梢性筋弛緩薬」があり、麻酔には末梢性筋弛緩薬が使用される。この末梢性筋弛緩薬は、作用機序により「脱分極性」と「非脱分極性」に大別されるが、脱分極性の薬剤は、脱分極に伴う筋収縮により術後筋肉痛、高カリウム血症、眼内圧上昇、脳圧上昇などの副作用が多く、悪性高熱症の発現も報告されていることから、末梢性筋弛緩薬では現在、非脱分極性が主流となっている。

 非脱分極性の薬剤として、これまで日本では、ベクロニウム臭化物(商品名:マスキュラックスほか)とパンクロニウム臭化物(商品名:ミオブロック)が使用されてきたが、中でもベクロニウムは、作用持続時間が短く循環器系への影響も少ないことから、広く使用されている。だが、ベクロニウムは、効果発現までに比較的長い時間(2〜3分)が必要であるため、特に短時間での処置が必要となる気管挿管においては、より作用発現時間の短い薬剤が望まれていた。

 今回承認されたロクロニウムは、ベクロニウムの誘導体である。ロクロニウムは、作用持続時間に関してはベクロニウムと同程度でありながら、作用発現時間がベクロニウムよりも短い(0.6mg/堙衢燭84.8秒)ことが最大の特徴である。作用発現時間が短いため、気管挿管をスムーズに行うことができ、低酸素血症や誤嚥などのリスク軽減が期待できる。また近年、全身麻酔では、全身麻酔薬とともに鎮静催眠薬、鎮痛薬、筋弛緩薬などを組み合わせて行う「バランス麻酔」(TIA)が主流となっているが、ここで使用される筋弛緩薬としても、今後は、使い勝手のよいロクロニウムが多く使用されていくものと考えられる。なお同薬は、1994年に英国、オランダ、米国で発売されて以降、2007年6月までに世界80カ国以上で承認されている。

 同薬の使用に当たっては、ベクロニウムと同様、重症筋無力症や筋無力症候群の患者への使用が禁忌であることに注意する。また、アナフィラキシーおよびアナフィラキシー様反応、遷延性呼吸抑制、横紋筋融解症といった重大な副作用にも注意が必要である。