2007年7月31日、選択的アルドステロン阻害薬であるエプレレノン(商品名:セララ錠)が製造承認を取得した。薬価収載後、今秋には発売される見込みである。エプレレノンの適応は「高血圧症」で、用法・用量は「成人には1日1回50mgから投与を開始し、効果不十分な場合には100mgまで増量可能」である。

 エプレレノンは、アルドステロン受容体(ミネラロコルチコイド受容体)を選択的に阻害する薬剤である。アルドステロンは、副腎皮質から分泌されるステロイドホルモンの1つであり、レニン・アンジオテンシン・アルドステロン系の最終生成物である。アンジオテンシンII(AII)により分泌が促進され、腎の遠位尿細管に作用してナトリウムや水の再吸収を促進することで、体液量を増加させ血圧を上昇させる。エプレレノンは、そのアルドステロンの作用を受容体レベルで阻害することで、降圧作用を発揮する。また最近では、アルドステロンが心臓、血管、腎臓などの臓器障害に関与していることが明らかになり、エプレレノンには、これら臓器に対する保護作用も期待されている。事実、米国では、高血圧症のほかに「心筋梗塞後のうっ血性心不全」にも適応を取得している。

 同薬の特徴は、その受容体選択性にある。アルドステロン受容体に対する阻害作用を有する薬剤としては、従来から、カリウム保持性利尿薬のスピロノラクトン(商品名:アルダクトンAほか)が使用されているが、受容体選択性が低く、同じステロイドホルモンであるプロゲステロンの受容体をもブロックしてしまうため、内分泌・性腺系の副作用(女性化乳房、月経異常など)が起こることが知られている。これに対してエプレレノンは、アルドステロン受容体への選択性が高いため、こうした副作用の発現頻度が低いと考えられているのである。

 またエプレレノンは、単独でも他薬と同等の降圧作用が認められるが、その作用メカニズムから、レニン・アンジオテンシン系(RA系)に作用するアンジオテンシン変換酵素阻害薬(ACE阻害薬)やアンジオテンシンII受容体拮抗薬(ARB)との併用も有用だと考えられている。特に、ACE阻害薬では、投与により血中AII濃度は抑制できていても、血中アルドステロン濃度が減少しないというエスケープ現象が知られているが、エプレレノンの併用でこの問題が回避できる可能性がある。

 このようにエプレレノンには、従来薬にはない様々な特徴があることから、今後、臨床的位置づけが徐々に確立され、使用頻度が増えていくものと想像される。ただし副作用面で注意しなければならないのは、ACE阻害薬、ARB、スピロノラクトンなどと同様に、血清カリウム値が上昇することである。投与前に患者の腎機能を確認するとともに、投与中の患者の血中カリウム濃度には、常に注意を払う必要がある。