「アクチバシン注」の添付文書(2007年7月改訂・第8版)より抜粋。下線部が改訂箇所。

 2007年7月6日付の厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知により、血栓溶解薬アルテプラーゼ(商品名:グルトパ注、アクチバシン注)の添付文書が改訂され、警告欄に「胸部大動脈解離あるいは胸部大動脈瘤を合併している可能性がある患者では、適応を十分に注意すること」の項目が追加された。

 アルテプラーゼは、血栓上のプラスミノーゲンをプラスミンに変換する生体内生理活性物質(t-PA:組織性プラスミノーゲンアクチベータ)である。血栓溶解療法には、t-PA以外に、尿由来のウロキナーゼ製剤も従来から使用されているが、ウロキナーゼは、病変部位の血栓のみならず、循環血液中の線溶活性を亢進させることから、出血傾向に陥りやすいという問題を抱えている。この点、t-PAは、血栓を構成するフィブリンへの親和性が高いため、病変部位の血栓溶解に対する選択性が比較的高く、出血傾向が生じにくいことが期待できる。こうした点が評価され、1996年の米国での承認を皮切りに、世界的に広く使用されるようになっている。

 なお日本では、t-PA製剤として、アルテプラーゼのほかに、モンテプラーゼ(商品名:クリアクター)、パミテプラーゼ(商品名:ソリナーゼ)も臨床使用可能であり、いずれも「急性心筋梗塞における冠動脈血栓の溶解(発症後6時間以内)」に適応を有している。ただし、心筋梗塞に加えて、「虚血性脳血管障害急性期に伴う機能障害(発症後3時間以内)の改善」にも適応があるのは、アルテプラーゼのみである。

 今回、アルテプラーゼに冒頭のような警告が追加されたのは、以下の2点が理由である。


(1)胸部大動脈解離や胸部大動脈瘤を合併している症例に使用され、胸部大動脈解離の悪化や胸部大動脈瘤破裂により死亡に至った症例が10例集積された。

(2)2007年5月に米国で公表されたAHA/ASAの「成人虚血性脳卒中急性期ガイドライン」に、大動脈解離に関する注意喚起の記載がある。(AHA:American Heart Association、ASA:American Stroke Association、参考文献:Adams HP Jr et al. Stroke 2007;38:1655-1711)

 今後とも、アルテプラーゼが脳梗塞や心筋梗塞の急性期に必要不可欠な薬剤であることに変わりはないが、今回の添付文書改訂を受け、今まで以上に慎重に使用する患者を選択したり、使用中や使用後に患者の状態をよく観察するなど、十分な配慮が必要になるものと考えられる。