2007年4月18日、抗血栓症薬のフォンダパリヌクスナトリウム(商品名:アリクストラ皮下注1.5mg、同2.5mg)が製造承認を取得した。薬価収載後に発売される予定である。フォンダパリヌクスの適応は、「静脈血栓塞栓症の発現リスクの高い、下肢整形外科手術施行患者における静脈血栓塞栓症の発症抑制」である。

 静脈血栓塞栓症VTE)とは、静脈に血栓が形成される病態の総称であり、下肢の深部静脈に血栓ができる「深部静脈血栓症」や、深部静脈に形成された血栓が飛んで肺動脈が閉塞する「肺血栓塞栓症」などがこれに含まれる。飛行機などでの長時間の移動中に発症する、いわゆる「エコノミー症候群」もVTEの一病態である。血流のうっ滞、血管障害、血液凝固能の亢進などが原因となるが、臨床症状が乏しいことから早期発見が難しく、急性肺血栓塞栓症を発症すると死亡率が高いことが知られている。

 この静脈血栓塞栓症は、膝関節骨折全置換術や股関節全置換術など、特に下肢の整形外科手術後に発症リスクが高く、これまでも術後早期から、薬物などを使った予防が行われている。具体的には、ワルファリンカリウム(商品名:ワーファリンほか)、へパリンカルシウム(商品名:カプロシンほか)、へパリンナトリウム(商品名:ヘパリンほか)といった抗血栓薬が使用されているが、これらに新たな選択肢として追加されるのが、今回承認されたフォンダパリヌクスである。

 フォンダパリヌクスは、血液凝固過程においてアンチトロンビンIII(ATIII)と結合し、血液凝固第Xa因子を選択的に阻害する。第Xa因子は、プロトロンビンからトロンビンを産生し、トロンビンは静脈血栓の生成に重要なフィブリンの形成を促進する。この第Xa因子を阻害することで、フォンダパリヌクスは静脈血栓の形成を予防する。従来から使用されているヘパリンも、同様にATIIIに作用する薬剤だが、第Xa因子だけでなく、トロンビンを直接阻害する作用をも有するため、出血のリスクが高まることが問題となっていた。その点、フォンダパリヌクスは、第Xa因子のみを選択的に阻害するため、生理的な止血には影響が少ないと考えられている。またフォンダパリヌクスは、皮下投与時の半減期が約14〜17時間とヘパリンに比べて長く、1日1回皮下投与で効果を発揮するのが特徴である。

 こうしたフォンダパリヌクスの安全性や有効性は、海外での使用実績や国内での臨床試験で確認されている。実際、第7回米国胸部疾患学会(ACCP)のVTE予防ガイドラインでは、膝関節全置換術など下肢手術による血栓の予防のために、フォンダパリヌクスを少なくとも10日間使用することが推奨されている。同薬は、2001年12月に米国で承認されて以降、2007年4月現在、欧州連合(EU)主要国を含む世界65カ国で承認・臨床使用されている。日本では、2005年11月の申請後、2006年2月に優先審査品目に指定され、今回の承認に至っている。

 なお、フォンダパリヌクスは、国内臨床試験で副作用が38.5%に認められている。主な副作用は、肝機能障害(10.7%)、血小板数増加(8.1%)、出血(7.8%)である。副作用防止のため、使用に当たっては、出血リスク、症状(手術後の腎機能の低下、血行動態等の心機能、尿量等)、体重、年齢など、個々の患者の状態を十分考慮する必要がある。