2007年2月12日、米食品医薬品局(FDA)は、経口抗菌薬のテリスロマイシン(商品名:ケテック)の添付文書が改訂されたことを発表した。具体的には、これまで認められていた適応症の一部が削除されるとともに、重症筋無力症患者が禁忌に追加されるなど、使用上の注意が改訂された。なお日本では、これを受けた添付文書改訂は、今のところ行われていない。

 今回、米国でのテリスロマイシンの添付文書改訂に関して、FDAが発表したのは、(1)米国で承認された適応のうち「急性増悪慢性気管支炎」「急性細菌性副鼻腔炎」を削除し、「市中肺炎(軽度から中等度)」のみとすること、(2)重症筋無力症患者には禁忌である旨を警告欄を設けて記載するなど、添付文書の使用上の注意を改訂すること、(3)テリスロマイシンの患者用医薬品ガイドを作成し、処方のたびごとに患者に渡すこと――の3点である。このうち(2)の使用上の注意改訂に関しては、重症筋無力症が「投与禁忌」の対象になった以外に、視覚障害や意識消失等の副作用についての注意喚起も追記された。

 テリスロマイシンは、新規構造を有する世界初のケトライド系経口抗菌薬として、2001年に欧州連合(EU)で承認されて以来、世界各国で臨床使用されている。構造的には14員環ラクトンを有し、マクロライド系抗菌薬と似ているが、側鎖にケトン基を有することからケトライド系抗菌薬に分類されている。一般の細菌や非定型微生物に対する広い抗菌スペクトルを持ちつつ、耐性肺炎球菌(ERSP、PRSP)にも有効な点が特徴である。

日本の「ケテック錠300mg」の添付文書(2006年10月改訂・第9版)より、一部抜粋。

 日本でのテリスロマイシンの適応は、「咽頭・喉頭炎、扁桃炎、急性気管支炎、肺炎、慢性呼吸器病変の二次感染、副鼻腔炎、歯周組織炎、歯冠周囲炎、顎炎」と米国とは異なっており、今回の米国での適応症の変更をそのまま当てはめることはできない。また、テリスロマイシンによる意識消失や肝機能障害の副作用については、既に、2004年12月に厚生労働省の『医薬品・医療用具等安全性情報No.208』で注意が喚起されている。さらに翌年4月に厚労省は、意識消失に関して、患者向け説明資料の作成・提供と発生機序解明のための調査研究を製薬会社に指示している。なお、意識消失および重症筋無力症患者への投与に関する注意事項は、日本の添付文書では「慎重投与」および「重要な基本的注意」に記載されている。

 現時点で日本では、改めての添付文書改訂は行われていないものの、今後、テリスロマイシンを使用する際には、意識消失の副作用があり得ることや、重症筋無力症患者には慎重に投与すべきであることなどについて、再度添付文書の内容を確認し、投与対象の選択や患者指導などを慎重に行うようにするべきであろう。