2007年1月26日、ナルコレプシー治療薬モダフィニル(商品名:モディオダール錠100mg)が製造承認を取得した。

 ナルコレプシーは、過眠症の一種であり、「居眠り病」「嗜眠病」とも呼ばれる。日中の過剰な眠気・睡眠発作、情動脱力発作(カタプレキシー)、入眠時幻覚、睡眠麻痺(かなしばり)を四大主徴とする睡眠障害と定義される。中でも、最も特異的な症状はカタプレキシーであり、具体的には「笑いや怒り、興奮など強い喜怒哀楽の感情の動きをきっかけに突然、全身の筋緊張の低下を起こす」という症状である。こうした発作が突然起こることから、患者は社会的に不利益を被る場合が多いとされる。ナルコレプシーは若年者に患者が多く、日本での有病率は0.16〜0.18%と推定されている。

 ナルコレプシーの発症メカニズムは明らかではないが、治療では、昼間の睡眠発作・眠気過剰に対する薬物療法として、覚醒作用がある塩酸メタンフェタミン(商品名:ヒロポン)、塩酸メチルフェニデート(商品名:リタリン)、ペモリン(商品名:ベタナミン)などの精神刺激薬が使用される。ただし、メタンフェタミンは覚せい剤取締法の対象であることから、使用が制限されているのが現状である。またメチルフェニデートは即効性があり、ペモリンは持続性があるなどといった利点もあるが、イライラ、過度の興奮などの副作用に十分な注意が必要となる。

 今回承認されたモダフィニルは、作用機序の詳細は明らかでないが、中枢性α1受容体刺激により覚醒促進作用を発揮すると推測されている。従来薬に比べて安全性が高いと考えられ、実際、臨床試験で報告された副作用は、頭痛、めまい、下痢など軽度な副作用が主であり、投与中止に至るような重大な副作用は認められていない。本薬は、既に欧米をはじめ世界34カ国で臨床使用されており、ナルコレプシーに伴う日中の過度の眠気に対する標準治療薬として位置付けられている。日本では、希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受けて開発され、2005年3月に承認申請が行われていた。

 なおモダフィニルは、海外では睡眠時無呼吸症候群(SAS)や注意欠陥多動性障害(ADHD)などの治療に使用されている例もあり、日本でも現在「睡眠時無呼吸症候群において残存する眠気」への適応拡大を目指して、開発が行われている。

 今後、日本でもナルコレプシー治療にモダフィニルが多く使用されるものと推測されるが、使用に当たっては、米国睡眠医学会が編集した睡眠障害国際診断分類(ICSD)でナルコレプシーと確定診断する必要があるので注意したい。また本薬は覚醒作用があることから、不眠に注意し、夕刻以後の投与は避けなければならない。