2007年1月26日、パーキンソン治療薬エンタカポン(商品名:コムタン)が製造承認を取得した。「COMT阻害薬」という日本にはこれまでになかった新しいタイプのパーキンソン病治療薬で、併用によりドパミン製剤の治療効果を増強する。薬価収載後に発売される見込みである。

 パーキンソン病は、中枢のドパミン不足により、振戦、固縮、無動、姿勢反射障害などの症状を呈する神経変性疾患であり、治療ではドパミンの補充療法が中心となる。具体的には、ドパミン自体は中枢移行性が低いため、中枢移行性の高いドパミン前駆物質の「レボドパ」(L-dopa)を投与する。レボドパは、脳内でドパミンに変換され、パーキンソン病の症状を改善する。ただし最近では、レボドパが末梢でドパミンに変換されるのを抑制する目的でカルビドパやベンセラジドなどのドーパ脱炭酸酵素阻害薬(DCI)を配合した製剤が主流になっている。

 しかし、レボドパ製剤を長期投与すると、病状の進行と相まって薬効が減弱したり、薬効の持続時間が短縮し次の服用時間前に症状が強くなる「wearing off現象」が生じ、疾患全体のコントロールが悪化することが知られている。特に、症状の日内変動を来すwearing off現象は、患者のADL低下を招く深刻な問題となっており、新たな治療薬の開発が待たれていた。

 今回承認されたエンタカポンは、DCIと同様、末梢におけるレボドパの代謝酵素であるカテコール-0-メチルトランスフェラーゼ(COMT)を阻害する薬剤である。COMTを阻害し、末梢におけるレボドパから3-Omethyldopa(3-OMD)への代謝を阻害することで、レボドパの最高血中濃度を高めずに血中濃度を維持することが可能になる。また、レボドパと3-OMDは血液脳関門で競合しながら脳内へ移行するが、COMT阻害薬の使用により3-OMDが減ることで、この競合が起こらず、レボドパの脳内移行をより高めることができる。こうした作用により、エンタカポンには、レボドパの使用量を減らしたり、on時間(症状が改善している時間)を延長する効果が期待できる。

 エンタカポンは、1998年のフランス、オーストリアでの発売を皮切りに、米国など世界75カ国以上で広く使用されている。使用には、レボドパ+カルビドパ、レボドパ+ベンセラジドといったレボドパ製剤との併用が条件となる。また、投与できるのは、既にレボドパとDCIの配合剤で治療を行っているが、十分な効果が得られないパーキンソン病患者のみである。なお同薬の適応が、パーキンソン病治療薬として初めて、「症状の日内変動(wearing off現象)の改善」という具体的な症状まで踏み込んだ内容となっているのも特徴である。

 エンタカポンを使用する際の注意点としては、(1)レボドパの生物学利用率を高めるため、ジスキネジーなどのドパミン作動性の副作用が起こりやすくなる、(2)投与中止時に、悪性症候群や横紋筋融解症が発現する可能性がある、(3)投与中に前兆のない突発性睡眠、傾眠、起立性低血圧が発現する恐れがある−−などが挙げられる。