抗悪性腫瘍薬「ドキシル注20mg」(製造・販売:ヤンセンファーマ)

 2007年1月19日、抗悪性腫瘍薬のドキソルビシン塩酸塩のリポソ−ム製剤(商品名:ドキシル注20mg)が薬価収載され、2月1日に発売される予定である。本薬は、「エイズ関連カポジ肉腫」に適応を有する日本初の薬剤であり、厚生労働省の未承認薬使用問題検討会議でも取り上げられていた。

 カポジ肉腫は、血管やリンパ管の内皮細胞から発生する多発性特発性出血性肉腫であり、HIV感染症が主な原因とされている。エイズ治療では、近年の薬剤開発の進展や多剤併用療法(HAART)の進歩により、ウイルス量を抑制したり、免疫機能を維持・回復することが可能になっている。その結果、日和見感染症の発症率が減少し、エイズ患者の予後も改善されてきたが、エイズ関連カポジ肉腫に関してはわが国には治療薬がなく、登場が待たれていた。ちなみに、これまでカポジ肉腫の治療では、放射線療法、液体窒素による凍結療法、エトポシド・ビンブラスチンなど従来の抗悪性腫瘍薬の単独または併用療法が行われていたが、いずれも満足できる成果が得られていなかった。

 近く発売されるドキシルは、従来から使用されているアントラサイクリン系抗悪性腫瘍薬のドキソルビシンを、ポリエチレングリコール(PEG)化リポソームに封入した薬剤である。PEG化されたリポソームに封入されているため、マクロファージ等の貪食細胞に捕捉されることなく標的組織(腫瘍細胞)に到達する。リポソームの直径は約100nmと小さいため、透過性が亢進した腫瘍の毛細血管系を通じて腫瘍組織に侵入し、内部に蓄積されてドキソルビシンを放出するという仕組みである。このようなDDS(drug delivery system)技術により、標的組織内でのみ薬物濃度を高めつつ、血中の遊離ドキソルビシン濃度を低下させて全身性の副作用(骨髄抑制、脱毛、心毒性など)を軽減することに成功している。

 ドキソルビシンのリポソ−ム製剤は、既に米国を含む世界の約80カ国で承認されている。海外臨床試験では、全身化学療法を行っていない患者において、腫瘍縮小効果で54.7%の奏効率が認められている。