2007年1月4日、悪性胸膜中皮腫治療薬のペメトレキセドナトリウム水和物(商品名:アリムタ注射用500mg)が製造承認を取得した。薬価収載後に発売される見込みである。悪性胸膜中皮腫は、アスベスト石綿)曝露との強い関連性があり、わが国でも2005年にアスベストによる健康被害が社会問題になったことで注目が集まっていた。その影響もあってか、本薬は、2006年6月26日の承認申請後にすぐに優先審査品目に指定され、申請から約半年で承認されるという異例の「スピード承認」となった。

 中皮腫とは、胸膜や腹膜、心膜の表面を覆っている中皮が腫瘍化したものである。特に悪性中皮腫は、ほとんどがびまん性に胸膜あるいは腹膜などに沿って広範に広がっていく。自覚症状としては、胸膜に広がった場合(胸膜中皮腫)には、大量の胸水貯留による呼吸困難や胸痛が生じ、腹膜(腹膜中皮腫)では腹水による腹部膨満などが起こる。

 悪性中皮腫では、早期に発見されれば、外科療法を中心に放射線療法や化学療法が行われるが、現状では早期診断が難しく、進行すると治療が難しかった。中でも悪性胸膜中皮腫は患者数が多く、世界中で新たに診断される患者が年間1万〜1.5万人と推定されており、日本でも、悪性胸膜中皮腫による死亡者数が増加していると報告されている。

 今回、悪性胸膜中皮腫の治療薬として承認されたペメトレキセドは、葉酸と構造が類似した「葉酸代謝拮抗薬」である。具体的には、核酸であるプリンおよびピリミジンの合成酵素を阻害することで抗癌作用を発揮する。既に2004年2月にアメリカで承認され、その後、現在までにEU(欧州連合)、タイ、中国など世界84カ国で、唯一の悪性胸膜中皮腫治療薬として承認されている。

 悪性胸膜中皮腫の治療に使用する場合には、同じ抗癌剤である白金製剤のシスプラチン(商品名:ブリプラチン、ランダ)と併用する。これは、海外と日本での臨床試験において、ペメトレキセドをシスプラチンと併用することで、シスプラチン単独療法よりも生存期間が延長することが確認されていることが根拠となっている。なお、シスプラチンも「ペメトレキセドとの併用療法」で、悪性胸膜中皮腫の適応が追加承認されている。

 なお、ペメトレキセドは葉酸代謝拮抗薬であることから、使用中に生じる可能性のある重篤な副作用の軽減のために、必ず葉酸およびビタミンB12を投与しなくてはならない。また本薬は、使用全症例で特定使用成績調査が行うことが義務付けられている。