2007年1月下旬、インフルエンザ菌b型ワクチン(商品名:アクトヒブ)が製造承認を取得する見込みである。インフルエンザ菌は、ヒト上気道に常在するグラム陰性桿菌であり、莢膜の有無と抗原性により分類されるが、中でもインフルエンザb型Hib)が最も病原性が高く、乳幼児の細菌性髄膜炎の原因菌として問題となる。ちなみに、毎冬流行するインフルエンザは、インフルエンザウイルスによるウイルス感染症であり、インフルエンザ菌は本症の病原微生物ではない。

 Hib感染による乳幼児の細菌性髄膜炎は、初期診断や治療が難しいため古くからワクチンの必要性が議論され、1980年代後半には欧米を中心に予防効果が高いHibワクチンが導入された。米国では、このワクチンによる定期予防接種の導入により、Hib罹患率が100分の1にまで減少した実績を持つ。さらに1998年、世界保健機関(WHO)がHibワクチンの乳児への定期接種を推奨する声明を出したことから、現在では世界100カ国以上で使用されるようになり、世界的に見ればHib感染症はまれな疾患となっている。

 ところが残念なことに、これまで日本では承認されておらず、2003年に承認申請が行われたものの3年以上も承認されないままだった。これは、日本における細菌性髄膜炎の罹患率が欧米の数分の1程度と低く、Hibワクチンの必要性に関する議論が社会的に広まらなかったことが一因とされている。

 しかし現実には、日本でも毎年、5歳未満の人口10万人当たり少なくとも8.6〜8.9人がHib感染による細菌性髄膜炎に罹患していると推定されている。Hibによる細菌性髄膜炎は予後が悪く、罹患児の5%が死亡し、25%に聴覚障害やてんかんなどの後遺症が生じる。さらに最近は、Hibの薬剤耐性化が急速に進み、Hib感染症がさらに難治化する傾向にある。こうした実情を踏まえ、日本小児科学会は2005年6月、厚生労働省に対して要望書を提出し早期承認を求めていた。

 前述のように、同ワクチンは1月後半に製造承認を取得する予定だが、当面は「任意接種」となることから、患者の費用負担が大きいこと(通常は4回接種で3万円程度)が課題になると考えられる。Hibワクチンは、海外での使用実績から、小児に大きな利益があることは確実であり、早急に費用負担軽減などの対策を講じるべきであろう。