2006年12月7日、消化性潰瘍治療薬ランソプラゾ−ルの注射製剤(商品名:タケプロン静注用)が発売された。ランソプラゾ−ルは、1992年からカプセル製剤(商品名:タケプロンカプセル)が発売されており、その後、口腔内崩壊錠(商品名:タケプロンOD錠)も発売されるなど、広く臨床で使用されている。ランソプラゾ−ルをはじめとするプロトンポン阻害薬PPI)は、H2ブロッカーとともに、現在、消化性潰瘍治療における中心的な薬剤である。

 PPIは、薬剤が胃粘膜壁細胞の酸生成部位へ移行した後、酸による転位反応を経て活性体へと構造変換され、この活性体が、酸生成部位に局在してプロトンポンプとしての役割を担っている「H+,K+-ATPase」のSH基と結合し、酵素活性を抑制することにより、強力な酸分泌抑制作用を発揮する。また近年、PPIの経口剤は、へリコバクタ−・ピロリの除菌療法における併用薬しても使用されるようになっている。

 今回発売されたランソプラゾ−ル注射剤の適応は、「出血を伴う胃潰瘍、十二指腸潰瘍、急性ストレス潰瘍、急性胃粘膜病変のうち、経口投与不可能なもの」である。中でも出血を伴う胃潰瘍、いわゆる上部消化管出血に関しては、患者自身の止血能力を最大限に発揮させるために、胃内pHを上昇させることが必須である。その意味で、PPIなどの胃酸分泌抑制薬の投与は必要不可欠であり、特に出血直後には、即効性のある注射製剤が有効である。実際、経口投与不可能な出血を伴う消化性潰瘍等を対象とした国内での臨床試験結果でも、3日間(72時間)以内に94.6%で止血効果が確認されている。

 なお本剤は、経口投与ができない患者のみが適応であり、内服可能になった後は経口剤に切り替えることが定められている(この注意は、添付文書にも記載されている)。またPPIの注射製剤としては、既にオメプラゾ―ル(商品名:オメプラール注用)が臨床使用されているが、オメプラゾール注射剤に認められている適応のうち、「経口投与不可能なZollinger-Ellison症候群」は、ランソプラゾール注射剤には適応が認められていないので、要注意である。

 ランソプラゾールでは、経口剤で確認されている重大な副作用として、アナフィラキシー反応、ショック、汎血球減少、無顆粒球症、溶血性貧血、顆粒球減少、血小板減少、貧血、重篤な肝機能障害、中毒性表皮壊死症(Lyell症候群)、皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、間質性肺炎などがあり、さらに類薬のオメプラゾ―ルでは外国で視力障害も認められている。注射剤においても、これらの副作用に注意する必要がある。