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2006. 11. 30

【新薬】抗悪性腫瘍剤「ベルケイド注射用」

ボルテゾミブ:新機序の多発性骨髄腫治療薬

北村 正樹=慈恵医大病院薬剤部

連載の紹介

最近の新薬や添付文書改訂の中から、週に1回、必ず押さえておきたい注目情報をピックアップしてお届けします。(協力:慈恵医大病院薬剤部)

 2006年10月20日、抗悪性腫瘍剤のボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)が製造承認を取得した。適応は「再発または難治性の多発性骨髄腫」である。プロテアソ−ム阻害という新しい作用機序を有する新規抗癌剤であり、世界75カ国で承認され臨床使用されている。日本では、多発性骨髄腫の治療薬として10年以上ぶりの新薬となる。

 血液癌の一つである多発性骨髄腫では、通常は骨髄に1%未満しか存在しない形質細胞(骨髄腫細胞)が癌化して骨髄内で増殖し、免疫能低下などを来す疾患である。原因は不明だが、遺伝的素因が疑われている。高齢者に好発し、40歳未満の発症はまれである。症状は多彩であり、骨髄腫細胞の増殖により、造血が抑制されて貧血や白血球減少が起きるほか、M蛋白の増加による腎機能低下、破骨細胞の活性化による骨破壊(骨折や高カルシウム血症)などが起こる。初診時からの生存期間が短く、予後が非常に悪い代表的な疾患の一つである。

 治療では、末梢血幹細胞移植をはじめとした造血幹細胞移植が行われるほか、化学療法ではドキソルビシン、メルファラン、シクロホスファミドなどの抗悪性腫瘍薬を組み合わせた多剤併用療法が行われる。ただし、化学療法は、有効性が必ずしも高くなく副作用も強いことから、新たな治療薬の登場が期待されていた。

 今回承認されたボルテゾミブは、細胞内に存在する酵素複合体「プロテアソ−ム」を阻害することで抗骨髄腫細胞作用を発揮する。プロテアソ−ムは、細胞内で不要となったタンパク質を分解する酵素であり、細胞周期に重要な役割を担っていることが判明している。骨髄腫細胞をはじめとする腫瘍細胞は、細胞周期に関連したこのプロテアソームにも何らかの異常があり、正常細胞よりもプロテアソーム阻害薬に対する感受性が高いのではないかと考えられている。

 このようにボルテゾミブは、既存の薬剤と異なった作用機序を有することから、特に再発または難治性の多発性骨髄腫に有効性が期待されており、厚生労働省「未承認薬使用問題検討会議」でも早期承認の要望が上がっていた。なお、かつて薬害で問題となったサリドマイドも、最近、多発性骨髄腫への有効性が確認された薬剤の一つであり、現在日本では承認申請中である。

 今後、ボルテゾミブは、その新規性から、多発性骨髄腫に対して積極的に使用されていくものと考えられる。ただし本薬の投与により、重篤な呼吸器障害(間質性肺炎など)が出現したことが報告されている(ボルテゾミブが、この呼吸器障害の直接的な原因であるか否かに関しては現時点では不明な点が多い)。使用時には、特にこの副作用に注意するようにしたい。

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