「ブスルフェクス点滴静注用60mg」(製造・販売:麒麟麦酒)

 造血幹細胞移植前治療薬ブスルファン(商品名:ブスルフェクス点滴静注用)が、2006年10月10日に発売された。同薬は、2003年9月に希少疾病用医薬品(オーファンドラッグ)の指定を受け、2006年7月26日に輸入承認を取得、9月15日に薬価収載されていた。

 ブスルファンは、細胞内に取り込まれた後にDNAをアルキル化して、DNA複製を阻害することで抗悪性腫瘍作用や骨髄抑制作用を示すアルキル化抗悪性腫瘍薬であり、既に経口製剤(商品名:マブリン)が慢性骨髄性白血病の治療薬として広く臨床使用されている。今回の承認されたのは、このブスルファンの注射製剤であり、1999年に米国で発売されて以来、カナダ、イスラエル、EU(欧州連合)、韓国、中国などで発売されている。

 現在、造血幹細胞移植は、癌や血液疾患、遺伝性疾患等に対する根治治療法の一つとして注目されている。具体的には、機能が低下または失われた造血幹細胞を、移植により正常な細胞に置き換えることで、最終的に悪性腫瘍など疾病の原因となっている細胞を除去することを目的としている。

 造血幹細胞移植には、他人の正常な造血幹細胞を移植する「同種移植」と、患者自身の造血幹細胞を移植する「自家移植」に分類される。中でも同種移植時には、拒絶や移植免疫反応(移植片対宿主病:GVHD)を生じさせないように、HLA(ヒト主要組織適合性抗原)の適合したドナーを選択することが必須となる。さらに拒絶やGVHDの防止を目的とした移植前治療として、大量のアルキル化抗悪性腫瘍薬(ブスルファン、シクロホスファミド〔商品名:エンドキサン〕、メルファラン〔商品名:アルケラン〕)を使った化学療法や、放射線療法が行われる。

 しかし放射線療法では、甲状腺機能の低下、代謝異常、白内障などが高頻度に発現するという問題が指摘されている。また、抗悪性腫瘍薬を使った大量化学療法のうち、ブスルファンでは、これまで経口製剤が使用されていたため、腸管からの吸収に個人差があって正確な血中濃度を把握できず、投与不足により生着不全や再発が起こったり、逆に過量投与による肝中心静脈閉塞症(VOD)などの副作用が起こりやすくなる危険があった。特にVODは、肝腫大、黄疸、水分貯留を3兆候とし、血栓形成による肝静脈のうっ滞と肝細胞死に至る場合もある重大な副作用である。

 今回、ブスルファンの注射製剤が発売されたことで、血中濃度の厳密なコントロールが可能となり、過量投与にVODなど副作用を回避できるのはないかと期待されている。もっとも、本剤の使用により、VODをはじめとする重大な副作用を完全に回避できるわけではない。今後も、使用にあたっては、緊急時に十分に対応できる医療施設において、移植に十分経験がある医師の管理下で行われなければならない。