「シプロキサン注200mg/注300mg」の添付文書(2006年10月改訂・第14版)より。

 2006年10月、ニューキノロン系注射用抗菌薬シプロフロキサシン注射剤(商品名:シプロキサン注)の添付文書が改訂され、使用上の制限が一部緩和された。

 具体的には、これまで「効能・効果に関連する使用上の注意」の項にあった「カルバペネム系、第3世代またはそれ以降の世代として開発された新しいセフェム系注射用抗菌剤を使用しても十分な臨床効果が得られない患者で、かつ経口抗菌剤が投与不能な場合に限定すること」という文面が、「原則として、(中略)重症あるいは他の抗菌剤を使用しても十分な臨床効果が得られない患者に限定すること」と変更された。

 シプロフロキサシン注射剤は、幅広い抗菌スペクトルと強い抗菌力を有する抗菌薬として2000年11月に発売された、ニューキノロン系抗菌薬で初めての注射製剤である。ニューキノロン系抗菌薬の中でも特に緑膿菌を含むグラム陰性菌に対し優れた抗菌力を示し、組織移行性も良好なことから、各種細菌による敗血症、肺炎、外傷・熱傷および手術創等の2次感染などが適応症とされ、さらには2001年12月には炭疽、2006年2月にはレジオネラ属が適応菌種として追加された。現在でも、臨床使用できるニューキノロン系注射製剤は、シプロフロキサシン以外に、メシル酸パズフロキサシン(商品名:パズクロス、パシル)があるだけである。

 シプロフロキサシン注射剤に使用制限が付与され、それが今回解除された経緯は、次の通りである。

 シプロフロキサシンは、承認申請時には「重症、難治性の感染症」という効能・効果が想定されていたが、その後の承認審査過程で、薬剤投与対象をより明確にすべきとの判断から、「具体的な薬剤使用においても効果不十分な症例にのみ使用」という注意書きが追記された。

 しかし、この制限に関して、臨床現場からは「治療ガイドラインや患者の状態などからシプロフロキサシンを第1選択薬として使用すべきであるにもかかわらず、この制限があるために使用できない」という矛盾が発売当初から指摘されていた。また2006年2月には、日本化学療法学会から「シプロフロキサシン注射剤を初期から投与することが最もふさわしい症例に対して、第1選択薬として用いることが可能になるように添付文書を改訂してほしい」との要望書が、厚生労働大臣と日本医師会長宛に提出された。こうした現場からの声とシプロフロキサシンのこれまでの使用実態を踏まえて、医薬品医療機器総合機構との協議の結果、今回の改訂の文言に落ち着いたのである。ちなみに、本改訂では「用法・用量に関連する使用上の注意」も併せて改訂され、症状緩解後の経口剤への切り替えに関する制限も緩和されている。

 この改訂により、今後、シプロフロキサシン注射剤を第1選択薬として使用する症例は、現在以上に増えることが予想される。しかし本薬は、添付文書の「用法及び用量に関連する使用上の注意」で、「原則として感受性を確認し、疾病の治療上必要な最小限の期間の投与にとどめること」が定められており、この点については今回の改訂でも変更されていない。新たな耐性菌の出現を防止する意味で、今後も、臨床分離菌を確定してから使用する必要があることを再認識したい。