「ストロメクトール錠3mg」の添付文書(2006年8月改訂・第7版)より抜粋。

 2006年8月21日、腸管糞線虫症治療薬のイベルメクチン(商品名:ストロメクトール)に「疥癬」の適応追加が承認され、併せて添付文書が改訂された。2005年3月以降、疥癬に対する同薬の使用には特定療養費制度(後述)が適用されていたが、今回、正式に適応を取得したことで通常の保険適用が可能になった。

 疥癬は、ヒゼンダニというダニの一種が、皮膚の角質内に寄生して起こる皮膚感染症であり、近年、高齢者の多い介護施設や医療機関などでの集団感染がしばしば報告されるようになり、問題になっている。感染者が発見された場合には、感染の拡大防止のために、患者自身だけでなく、患者に接触した人や家族、医療従事者まで予防措置が必要となったり、根絶には施設全体の消毒が必要となるなど、大規模な対策が必要となる。

 疥癬の治療には、これまで外用イオウ製剤(疥癬に適応あり)が使用されてきたが、患者の全身に塗布する必要があるにもかかわらず、その多大な労力に見合った十分な効果が期待できないことが、皮膚科専門医などから数多く報告されていた。このため、医薬品として認められていないガンマベンゼンヘキサクロライド(γ-BHC)や安息香酸ベンジルなどの実験用試薬を使った院内製剤が医師の裁量の下で使用されたり、イベルメクチンが適応外使用されていたのが現状だった。

 イベルメクチンは、腸管糞線虫症治療薬として1993年フランスで最初に承認された後、2001年に同国で疥癬治療薬としても承認。その後、世界各国で疥癬の標準治療薬として位置付けられており、日本でも、疥癬に対する適応拡大を望む声が強かった。しかし疥癬は、突発的に発生する疾患であるため、適応追加に向けた臨床試験(事前の治験審査委員会などの承認を得たGCPに基づく臨床試験)が難航していた。そこで、イベルメクチンの疥癬への適応拡大申請に関しては、ほかに有効な治療薬が日本になく、既に海外で疥癬に対して有効性・安全性が確認されていることなどから、臨床試験をせず、国内外の文献資料により行うことが認められた。

 この申請は2005年3月に厚生労働省に受理されたが、受理の日から今回の承認までの期間、「特定療養費」の制度が適用されていた。特定療養費制度とは、特定の分野に限って保険診療と保険外診療の併用を認める制度であり、イベルメクチンの疥癬での使用の場合には、患者が同薬の薬剤費のみを全額負担し、その他の医療費は保険診療で賄う仕組みであった。ただし、この制度を利用するには、各医療機関が都道府県社会保険事務局に届け出を行う必要があるなど、手続きが煩雑であった。

 今回、適応が追加され特定療養費の対象から外れたことで、今後は疥癬でのイベルメクチンの使用が容易になった。ただし、まだ日本では使用経験が少ないことから、投与に当たっては添付文書を十分に参照するとともに、投与後も副作用の発現などを十分に注意する必要がある。