「シンメトレル錠50mg、同錠100mg、同細粒」(2006年9月改訂・第10版)の禁忌欄より。

 2006年9月22日、厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知に基づき、塩酸アマンタジン(商品名:シンメトレルほか)の添付文書が改訂され、禁忌事項に「透析を必要とするような重篤な腎障害のある患者」が追記された。これまでに集積された重篤な副作用発現例を分析した結果、透析患者の比率が高かったことが、本改訂の根拠となっている。

 アマンタジンは、精神活動改善薬、パーキンソン症候群治療薬、抗A型インフルエンザウイルス薬といった、幅広い薬効を有する古典的な薬剤の一つである。特に、抗インフルエンザ効果に関しては、今でこそリン酸オセルタミビル(商品名:タミフル)やザナミビル水和物(商品名:リレンザ)が主流になってはいるが、数年前の一時期、国内で唯一使用可能な抗インフルエンザ薬として注目を集めたことは記憶に新しい。

 今回、アマンタジンの禁忌事項に「重篤な腎障害患者」が追記されたが、これは、同薬の体内動態からある程度は予測されていたことであり、添付文書中でも以前から「慎重投与」などの項目で注意が促されていた。アマンタジンは、大部分が未変化体として尿中から排泄される腎排泄型薬剤だからである。腎機能が低下している患者が服用すると、アマンタジンが体内に蓄積され、投与を中止しても高い血中濃度が維持される。その結果、アマンタジンによる重篤な副作用である意識障害(昏睡を含む)、精神症状(幻覚、妄想、せん妄、錯乱等)、痙攣、ミオクローヌス等が発現しやすくなるのである。

 腎機能低下とアマンタジン蓄積の関連性を調べた研究によると、アマンタジンの血中消失半減期は、健康成人で10〜12時間(健康成人)であるのに対し、腎機能低下に伴って延長し、透析患者で8日まで延長する(Horadam,V.W.et al.Annals Internal Medicine.1981;94:454.)。また同じ研究では、アマンタジンは透析膜を通過しにくいため、通常の血液透析(4時間)では少量(5%以下)しか除去されないことも報告されている。

 したがって今後は、アマンタジンを透析患者に投与しないように腎機能の状態に十分留意するとともに、腎機能低下者および腎機能低下が見られることの多い高齢者では、腎機能の状態を観察しながら慎重に投与するなどの配慮が必要となる。