「バルトレックス錠500」の添付文書(2006年9月改訂・第7版)より。下線部が今回の改訂部分。

 2006年9月13日、抗ウイルス化学療法薬の塩酸バラシクロビル(商品名:バルトレックス錠500、同顆粒50%)に、「性器ヘルペス再発抑制」の適応追加が承認され、併せて添付文書が改訂された(右写真)。

 バラシクロビルは、2000年10月に発売された、単純疱疹帯状疱疹の治療に適応を持つ抗ヘルペスウイルス薬である。今回適応が認められたのは、単純疱疹のうち、主に単純ヘルペスウイルス2型を原因とする性器ヘルペスの「再発抑制」である。ちなみに単純疱疹には、性器ヘルペス以外に、主に1型ウイルスによる「口唇ヘルペス」がある。

 性器ヘルペスは、主に性行為により感染する。感染後、数日から十数日間の潜伏期を経て、疼痛を伴う小水疱が陰部に出現するとともに、増殖したウイルスは知覚神経を上行して神経節へ入り潜伏する。この潜伏したウイルスが、宿主の免疫力の低下などで再活性化するのが「再発」である。再発時の症状は、初発に比べると弱いことが多いものの、人によっては心身の疲労や月経などの刺激により年1〜2回から月2〜3回の再発を見ることもあり、患者の苦痛は大きい。また、根治は難しい上、無症状時にも外陰部などにウイルスが排泄されている場合があるため予防が難しく、「パートナーに移してしまうかもしれない」「いつ再発するかわからない」といった患者の精神的な苦痛も問題とされている。

 こうした観点から、バラシクロビルによる性器ヘルペスの再発抑制療法は、既に世界54カ国で承認され、標準療法となっている。免疫正常患者を対象とした海外の臨床試験では、バラシクロビルの継続投与(500mg1日1回)により、1年後に1度も再発しなかった患者の割合が5.4%(プラセボ群)から40%に増加(再発リスクが71%低下)したことが報告されている。また、同薬の継続的な服用により、性行為時のパートナーへの感染も予防できることが明らかになっている。

 今回認められた「性器ヘルペスの再発抑制」の適応では、再発頻度が年6回以上を目安(免疫正常者の場合)に、1回500mgを1日1回を投与することとなっている。投与期間には制限はなく、1年間投与後に投与継続の必要性について検討することが推奨されている。こうした用法は、「治療」に用いられる場合の「単純疱疹では1回500mgを1日2回、5日間を目安に」「帯状疱疹では1回1000mgを1日3回、7日間を目安に」「初発型性器ヘルペスでは10日間まで使用可能」といった規定とは異なるので注意したい。

 性器ヘルペスの再発抑制のためにバラシクロビルを使用する場合には、1日投与量は少ないが、長期間使用し続けることが前提であり、腎排泄型の薬剤であることから、特に腎機能低下のある患者や高齢者などにおいては、腎機能を継続的に観察する必要がある。また海外臨床試験では、1日500mgでも投与患者の30%近くに臨床検査値異常を含む副作用が認められている。多く見られるのは、頭痛、嘔気、下痢、腹痛などである。