抗悪性腫瘍薬「テモダールカプセル20mg」「同100mg」(製造・販売:シェリング・プラウ)

 2006年7月26日、抗悪性腫瘍薬のテモゾロミド(商品名:テモダ−ルカプセル)が承認を取得した。テモゾロミドは、悪性神経膠腫に適応を有する経口剤で、9月15日に薬価収載され、同日付けで発売された。脳腫瘍関連の適応を持つ新薬としては、日本で19年ぶりの発売となる。

 神経膠腫グリオーマ)は、ニューロンの間を埋めている神経膠細胞から発生する脳腫瘍であり、原発性脳腫瘍の約3割を占めている。またテモゾロミドの適応である「悪性神経膠腫」は、神経膠腫の中でも脳内に浸潤性に発育し、神経症状や脳ヘルニアなどの重篤な腫瘍関連合併症を引き起こすことが知られている。悪性神経膠腫には、退形成性星細胞腫膠芽腫退形成性乏突起膠腫退形成性乏突起星細胞腫などがあるが、いずれも極めて予後が不良である。日本での悪性神経膠腫の年間発生患者数は、約2500人と推定されている。

 従来、悪性神経膠腫の治療には、手術、術後放射線、術後補助化学療法を組み合わせた集学的アプローチが用いられていた。このうち、術後補助化学療法には、脳腫瘍や膠芽腫などに適応を有する塩酸ニムスチン(商品名:ニドラン)、ラニムスチン(商品名:サイメリン)、インターフェロンβ(商品名:フエロン、IFNβモチダ)が用いられる。さらに2005年には、塩酸ニムスチン、塩酸プロカルバジン(商品名:塩酸プロカルバジン)、硫酸ビンクリスチン(商品名:オンコビン)の3剤併用療法(PAV療法)が悪性星細胞腫、乏突起膠腫成分を有する神経膠腫に認められている。

 今回承認されたテモゾロミドは、海外ではEU(欧州連合)や米国など世界78カ国で、膠芽腫の放射線治療との併用およびその後の維持療法の治療薬、再発・進行した膠芽腫などの治療薬として承認されている。なお、この薬剤は2005年7月、厚生労働省の「未承認薬使用問題検討会議」により、早期承認申請および放射線との併用による安全性確認試験の実施提案が行われていた。

 テモゾロミドは、抗悪性腫瘍薬の分類ではアルキル化薬に属する。生体内でメチルジアゾニウムイオンとなり、DNAをメチル化することによりDNA損傷を引き起こし、細胞周期の停止およびアポトーシスを誘導することにより細胞増殖を抑制する。また、テモゾロミドは経口カプセル製剤であるが、血液脳関門を通過し脳脊髄液への移行性も良好である。臨床試験でも、テモゾロミドと放射線治療との併用により、放射線治療単独と比べて生存期間に有意な改善が認められている(New England Journal of Medicine 2005 ;352 :997-1003.)。

 安全性に関しては、他の抗悪性腫瘍薬と同様、白血球減少や血小板減少などの骨髄抑制が問題となる。このため、テモゾロミド投与中は、血液検査等を行うなど患者の状態を常に観察することが求められる。また、他にも食欲減退、頭痛、便秘、悪心、嘔吐、毛髪脱落、痙攣、疲労、下痢、口内炎、霧視などの副作用も認められているので、使用時には十分な注意が必要である。