経口抗真菌薬の「イトリゾール内用液」(製造・販売:ヤンセンファーマ)

 2006年7月26日、経口抗真菌薬の「イトリゾール内用液」(一般名:イトラコナゾール)が承認を取得した。イトラコナゾールは、アゾール系抗真菌薬の一つであり、わが国では1993年7月から、経口カプセル製剤(商品名:イトリゾールカプセル)が臨床使用されている。今回承認されたのは、その経口液剤である。

 イトラコナゾールのカプセル製剤は、血中半減期が長く(100mg内服時:25時間)、組織移行性も良好であるという利点はあるものの、食事の影響により腸管からの吸収率や生物学的利用率が大きく変化する(食後に服用した方が吸収率が高い)ことが知られている。機序の詳細は不明だが、食事による胃酸分泌量の増加や胃の蠕動運動の活発化、食事内容の脂肪成分などが影響すると考えられており、食事による吸収等のばらつきを抑える目的で、カプセル剤の服用は「食直後」と定められている。このため、全身状態が不良で食事摂取が困難な患者や、胃酸分泌抑制薬(H2受容体拮抗薬、プロトンポンプ阻害薬など)を併用している患者などでは、イトラコナゾールが十分に吸収されず、十分な血中濃度が得られない場合があった。

 これに対し、今回承認された液剤は、胃酸の影響を受けずに吸収されるため空腹時の投与が可能であり、食事摂取が難しい患者でも安定した血中濃度が得られるのが特徴である。海外では、米国、英国をはじめとして57カ国で発売されている。

 ただし、この液剤には、効能・効果として「口腔咽頭カンジダ症および食道カンジダ症」しか認められておらず、カプセル剤で認められている内臓真菌症や皮膚真菌症といった広い適応は有していない。これは、難溶性のイトラコナゾールを液剤化するに当たって使用した溶解補助剤「ヒドロキシプロピル-β-シクロデキストリン」(HB-β-CD)によって、胃腸障害の発生が懸念されるためであると説明されており、諸外国でもこの適応しか有していない。

 もっとも、この「口腔咽頭カンジダ症および食道カンジダ症」では、口腔や咽頭の異常から十分な食事ができない患者が少なくないため、食事の影響を受けずに腸管から吸収される本液剤が有用である。さらに、服用した液剤が、病変部(口腔、咽頭、食道)に直接作用する効果も期待できるという利点がある。実際、イトラコナゾールの内用液は、米国では「口腔咽頭カンジダ症および食道カンジダ症」に対する推奨製剤として位置付けられている(米国感染症学会「カンジダ症治療のガイドライン」)。

 しかし臨床的に言えば、本液剤には前述のようなカプセル剤にない特徴を持つことから、「口腔咽頭カンジダ症および食道カンジダ症」以外の真菌症の治療にもニーズがあると推測される。とはいえ、少なくとも現時点では、有効性や安全性が確認されていないことから、適応以外の疾患には使用を控えるべきであり、あえて使用する場合には、いわゆる「適応外使用」になることを十分に認識しておかなければならない。