2006年7月26日、抗てんかん薬ガバペンチン(商品名:ガバペン錠)が製造承認を取得した。認められた適応は、「他の抗てんかん薬で十分な効果が認められないてんかん患者の部分発作(二次性全般化発作を含む)に対する抗てんかん薬との併用療法」である。

 てんかんは、世界保健機関(WHO)では「種々の成因によって起こる慢性の脳障害で、大脳ニューロンの過剰発射の結果起こる反復性発作(てんかん発作)を主な症状とし、これに種々の臨床症状および検査所見を伴うもの」と定義されている。日本におけるてんかんの有病率は0.5〜1%で、てんかん患者は100万人と推定されている。いずれの年代層でも発病し得るが、特に小児期から思春期にかけての発病が多いとされている。

 てんかんの治療では、難治例では脳外科手術が行われることもあるが、通常は抗てんかん薬を使った発作抑制が基本となる。抗てんかん薬としては、フェニトイン(商品名:アレビアチン、ヒダントール)、カルバマゼピン(商品名:テグレトールほか)、バルプロ酸ナトリウム(商品名:デパケン、バレリン、ハイセレニンほか)などが使用されてきた。これらは、神経細胞膜やシナプス機能に直接作用し、神経細胞の過剰興奮を抑制する薬剤である。しかし近年、これら古典的な抗てんかん薬では発作がコントロールできない難治例が全体の3割程度を占めるようになり、また副作用により使用を継続できない患者も少なくないため、新しい作用機序を有する新薬の登場が待望されていた。

 今回承認されたガバペンチンは、抑制性神経伝達物質のγ-アミノ酪酸GABA)の誘導体である。カルシウムの流入を抑制することで、グルタミン酸などの興奮性神経伝達物質の遊離を抑制するという、既存の抗てんかん薬とは異なった機序で抗てんかん作用を発現する。ちなみにGABA誘導体ではあるが、GABA受容体には結合せず、GABAの再取り込みや分解酵素には影響を与えない。

 海外では、1993年に英国と米国で承認されて以来、EU(欧州連合)、アジアを含む世界80カ国以上で使用されている。従来の抗てんかん薬とは異なる作用メカニズムであるため併用による効果が期待でき、実際、部分発作に対する併用療法の有用性も複数の臨床試験で確認されていることから、海外でも日本と同様、てんかん部分発作を抑制するための併用薬として使用されている。また、体内ではほとんど代謝されずに未変化体として尿中に排泄され、薬物代謝酵素を誘導・阻害しないことから、相互作用が起こりにくく他剤と併用しやすいという特徴を有している。なお、米国などでは、帯状疱疹後疼痛にも適応を有している。

 またガバペンチンは、安全性が高いことも特徴の一つである。具体的には、既存の抗てんかん薬と比較して重篤な副作用がほとんどなく、投与量を増加しても副作用の発現率が上昇しないことが知られている。ちなみに、ガバペンチンの主な副作用として、傾眠、めまい、運動失調、倦怠感などが確認されているが、これらの副作用による投与中断例は少ない(忍容性が高い)という報告もある。