2006年7月26日、B型慢性肝炎治療薬エンテカビル水和物(商品名:バラクルード)が製造承認を取得した。エンテカビルは、ヌクレオシド(核酸)系逆転写酵素阻害作用を有する抗ウイルス薬であり、B型肝炎ウイルスHBV)の増殖を抑制する経口製剤である。近く、薬価収載を経て発売される見込みである。

 HBVの主たる感染経路は母子間感染であるが、その約9割は自然経過によりHBVが減少し、健康人キャリアとなる。しかし残りの1割ほどでは、長期間炎症が持続するB型慢性肝炎が発症する。慢性肝炎からは年率約2%で肝硬変へと進展し、肝硬変からは年率約3%で肝癌が発生することが知られており、B型慢性肝炎の治療においては、HBVを排除し肝炎を鎮静化させることが最終目標となる。近年、ワクチンが広く使用されるようになったことで新規HBVキャリアの発生は大きく減少しているが、現時点でもわが国のHBVキャリアは100万人以上いると推定されている。

 B型慢性肝炎の治療には、インターフェロン療法、ステロイド離脱療法などがあるが、近年では抗ウイルス療法が積極的に行われるようになっている。この抗ウイルス療法に使用される薬剤(核酸アナログ製剤)としては、2000年11月に発売されたラミブジン(商品名:ゼフックス)と、2004年12月に発売されたアデホビルピボキシル(商品名:ヘプセラ)があり、今回承認されたエンテカビルはわが国では3番目の核酸アナログ製剤となる。エンテカビルは、2005年4月から米国で発売されているほか、中国、EU(欧州連合)など、20カ国以上の国と地方で承認されている。

 エンテカビルの最大の特徴は、その高い抗ウイルス効果である。最近発表された第3相二重盲検試験結果(N Engl J Med 2006;354:1001-1010)によれば、エンテカビルは、ラミブジンに比べて有意に治療効果が高く、安全性は同等で、エンテカビル耐性のHBVの出現は認められなかったと報告されている。エンテカビルは海外でも広く使用されるようになっており、今後、日本でも、ラミブジン、アデホビルとともに、B型慢性肝炎治療の中心的な薬剤として使用されていくものと考えられる。

 ただしエンテカビルでは、類薬で乳酸アシドーシスや肝障害といった重大な副作用が報告されているほか、頭痛、倦怠感、上気道感染症、鼻咽頭炎、上腹部痛、下痢などの副作用も報告されているので、注意が必要である。また、エンテカビルは小児における有効性と安全性は確立されていないため、16歳未満の小児患者には原則して使用しない。なお、投与予定患者には、エンテカビルの有効性を確実にするために、空腹時(食後2時間以降かつ次の食事の2時間以上前)に服用するように指導する必要がある。

【訂正】2007/3/23に以下の点を修正しました。
・最後の段落に「エンテカビルでは、重大な副作用として、乳酸アシドーシスや重大な肝障害の報告がある」とありましたが、これらは類薬(ヌクレオシド類縁体)での報告でしたので、この部分を「エンテカビルでは、類薬で乳酸アシドーシスや肝障害といった重大な副作用が報告されている」に訂正しました。