「ツムラ牛車腎気丸エキス顆粒(医療用)」(2006年6月改訂・第6版)の副作用欄から。

 2006年6月、厚生労働省医薬食品局安全対策課長通知に基づき、漢方薬の「牛車腎気丸エキス顆粒」の添付文書が改訂され、重大な副作用に「間質性肺炎」が追加された。この改訂については、さらに7月末に発刊された厚生労働省の『医薬品・医療機器等安全性情報 No.226』にも掲載され、注意喚起が行われた。

 牛車腎気丸は、「疲れやすくて、四肢が冷えやすく尿量減少または多尿で時に口渇がある次の諸症:下肢痛、腰痛、しびれ、老人のかすみ目、かゆみ、排尿困難、頻尿、むくみ」に適応を持つ漢方薬として、各科領域の診療現場で広く使用されている漢方薬の一つである。年間使用患者数は、約17万人(2005年度)と推測されている。今回の改訂は、直近3年間(2003年4月1日〜2006年4月11日)で、牛車腎気丸との因果関係が否定できない間質性肺炎が1例(死亡例はなし)確認されたことに基づくものである。

 間質性肺炎は、これまでに抗癌剤、市販感冒薬など、様々な薬剤で確認されており、死亡例も報告されていることから、重篤な薬剤性肺障害として位置付けられている。漢方薬による間質性肺炎は、慢性肝炎治療などで広く使用されている小柴胡湯において以前から報告されており、特にインターフェロン製剤併用時に死亡例で多く報告されたことから、過去に幾度となく緊急安全性情報(1996年3月)や安全性情報(1998年3月『No.146』、2000年1月『No.158』)などで警告・注意喚起が行われてきた。

 またほかにも、柴苓湯など、比較的使用頻度が高い漢方薬で、間質性肺炎の副作用事例が報告されている。2006年7月時点で、添付文書上に、重大な副作用として「間質性肺炎」の記載がある医療用漢方製剤は、表1に示した20種類がある。

表1 添付文書上、重大な副作用として「間質性肺炎」の記載がある医療用漢方製剤

黄連解毒湯、乙字湯、牛車腎気丸、三物黄ごん湯、柴胡加竜骨牡蛎湯、柴胡桂枝乾姜湯、柴胡桂枝湯、柴朴湯、柴苓湯、小柴胡湯、小青竜湯、辛夷清肺湯、清心蓮子飲、清肺湯、大柴胡湯、麦門冬湯、半夏瀉心湯、補中益気湯、防風通聖散、防已黄耆湯

 間質性肺炎の発現メカニズムは、ゲフィチニブ(商品名:イレッサ)などの抗癌剤では薬剤自体が持つ細胞毒性が原因とされているが、漢方薬では、主にアレルギー機序によるものと考えられている。漢方薬における原因成分は、含有生薬の一つである「オウゴン」ではないかとする研究報告もあるが、完全に立証・解明されたものではない。

 また、間質性肺炎の初期症状は、発熱、咳嗽、呼吸困難、肺音の異常(捻髪音など)など、一般的な感冒症状と類似しているため、発見が遅れやすいという指摘もある。実際、薬剤性の間質性肺炎であることに気付かれずに、原因薬剤の投与を続けたまま抗菌薬等の投与がなされるなど対応が遅れ、間質性肺炎が重症化した例も確認されている。

 こうしたことから、漢方薬による間質性肺炎は、頻度こそ低いものの常に念頭に置いておくべき副作用の一つであるといえるだろう。具体的には、漢方薬投与中に突然の発熱、呼吸困難などが認められた場合には、間質性肺炎の疑いを持ち、直ちに投与を中止する。また、胸部X線等の検査を行い、必要なら、感染性肺炎や細胞性蛋白症などとの鑑別診断を行う。そして、確定診断後は、ステロイド療法など適切な処置を速やかに行うことが肝要である。