「イムラン錠」の添付文書(2006年6月改訂・第9版)より、効能・効果の部分を抜粋。下線部が今回の改訂部分。

 2006年6月15日、免疫抑制薬イムラン(一般名:アザチオプリン)に「ステロイド依存性のクローン病の緩解導入及び緩解維持並びにステロイド依存性の潰瘍性大腸炎の緩解維持」の適応追加が承認され、併せて添付文書が改訂された(右写真)。ただし、アザチオプリン製剤のうち、今回適応追加が認められたのはイムラン(製造販売:グラクソ・スミスクライン)のみであり、現時点ではアザニン(製造販売:田辺製薬)には認められていないので注意が必要である。

 現在、臨床現場で使用されている免疫抑制薬は、代謝拮抗薬、アルキル化薬、生物活性物質、生物学的製剤に大別される。英国で開発され、日本では1969年から発売されているイミダゾリル誘導体のアザチオプリンは、代表的な代謝拮抗薬である。作用機序としては、体内で6-メルカプトプリン(6-MP)に分解、さらにチオイノシン酸に変換され、イノシン酸と拮抗して核酸(プリンヌクレオチド)の生合成を阻害することで免疫抑制作用を発揮する。アザチオプリン製剤は、これまで「臓器移植における拒絶反応の抑制」にしか適応を有していなかった。

 今回、イムランに適応が認められたクローン病と潰瘍性大腸炎は、症状が治まる「緩解期」と、下痢や下血が頻繁に起こる「活動期」を繰り返す難治性の腸疾患であり、クローン病と潰瘍性大腸炎を併せて「炎症性腸疾患」とも呼ばれる。現時点では、原因不明で根治療法がないことから、どちらも厚生労働省から特定疾患に指定されており、日本では10万人以上の炎症性腸疾患患者がいると報告されている。

 炎症性腸疾患の緩解を維持するための薬剤としては、炎症抑制作用を有するサラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリンほか)、メサラジン(商品名:ペンタサ)に加え、経口ステロイド薬が主に使用されてきた。しかし、経口ステロイド薬が十分に奏効しない難治例(ステロイド無効例)も少なくなく、アザチオプリンなど免疫抑制薬が以前から適応外で使用されていた。また、経口ステロイド薬に反応はするものの、減量すると症状が悪化する「ステロイド依存性」のクローン病や潰瘍性大腸炎では、経口ステロイド薬の長期大量投与を回避するために、しばしば免疫抑制薬が併用されていた。

 今回のアザチオプリンに対する炎症性腸疾患関連の適応追加は、こうした適応外使用を追認したものといえる。なお、この適応追加は、主に次の海外論文が根拠になったとされている。

【クローン病】アザチオプリン+プレドニゾロン併用群が、プレドニゾロン単独群よりも緩解率が高く、副作用発現も少なかった。(Ewe K, et al:Gastroenterology,1993;105:367-371)
【潰瘍性大腸炎】サラゾスルファピリジン+アザチオプリン併用群が、サラゾスルファピリジン単独群よりも、緩解維持効果が高かった。(Sood A, et al: J Gastroenterol,2002;37:270-274)

 アザチオプリンは、炎症性腸疾患に有用な薬剤として、これまでも適応外で使用されてきたことを考えると、今回適応を取得したことで従来以上に使用頻度が増えると推測される。しかし同薬は、あくまでも免疫抑制薬であり、使用に際しては、血液障害、ショック様症状(悪寒、戦慄、血圧降下等)、感染症、肝機能障害、黄疸、間質性肺炎、重度の下痢など、重大な副作用の発現に注意しなければならない。また、これまで通り、「白血球数3000/mm3以下の患者」「妊娠している患者」は投与禁忌であり、慎重投与の対象となる患者も多岐にわたるので、投与に当たっては患者の状態を十分に確認する必要がある。