「レニベース錠」の添付文書(2006年7月改訂・第10版)から。下線部が今回の改訂部分。

 2006年7月7日、厚生労働省医薬品食品局安全対策課事務連絡に基づき、日本で発売されているすべてのアンジオテンシン変換酵素(ACE)阻害薬(全12種類)の添付文書が改訂された。具体的には、「妊婦産婦授乳婦等への投与」の項目に、「海外で実施されたレトロスペクティブな疫学調査で、妊娠初期アンジオテンシン変換酵素阻害剤を投与された患者群において、胎児奇形の相対リスクは降圧剤が投与されていない患者群に比べて高かったとの報告がある」という文言が追記された。

 本改訂は、New England Journal of Medicine誌2006年6月8日号に米Vanderbilt大学医学部のWilliam O. Cooper氏らが発表した研究結果が根拠になっている。この論文では、妊娠初期のACE阻害薬への曝露と重大な先天奇形の関係をレトロスペクティブに調べた結果、曝露なしに比べた重大な奇形のリスク比が2.7倍で、特に心血管系と中枢神経系の奇形が増えていたことが報告されている(関連記事)。

 わが国においては従来から、ACE阻害薬は、すべての妊婦や授乳婦等が投与禁忌となっており、今回の改訂でもその点に変更はない。ただし、これまでの添付文書では、禁忌の理由として妊娠中期および末期のリスクだけが記載されており、今回の改訂で、新たに妊娠初期のリスクに関する情報が追記されたことになる。

 ちなみに米国では、添付文書上、妊婦に対するACE阻害薬の投与は、禁忌ではなく警告として記載されている。また米食品医薬品局(FDA)の胎児危険度分類でACE阻害薬は、妊娠第1期は「カテゴリーC」(危険性を否定できない)、妊娠第2期及び第3期は「カテゴリーD」(危険性を示す明らかな証拠がある)に分類されている。今回の疫学調査結果の報告を受けてFDAは、今回の調査結果が信頼性のある知見を得ることが難しいとされるレトロスペクティブの調査であり、再現性が確認されていないことから、「従来の胎児危険度分類を変更する予定はない」とし、結果などについて、ホームページ上に情報提供をするにとどまっている。

 近年、ACE阻害薬は、降圧作用以外に心臓や腎臓など臓器保護作用を有することや、心不全治療薬としての評価が高まっていることなどから、アンジオンテンシンII受容体拮抗薬(ARB)とともに使用量が増加している。しかし、ACE阻害薬および類似の作用機序を有するARBの妊婦に対する投与は、妊娠過程のすべての期間で避けるべきであることを、今回の添付文書改訂から再認識したい。なお、妊婦に対して降圧薬の投与が必要な場合には、中枢性交感神経抑制薬のメチルドパ(商品名:アルドメットほか)など、比較的リスクの低い薬剤を選択するのが一般的である。