「ジェムザール注射用」の添付文書(2006年7月改訂・第9版)から。

 2006年6月、代謝拮抗性抗悪性腫瘍剤塩酸ゲムシタビン(商品名:ジェムザール)の効能効果に、胆道癌が追加された。日本での胆道への適応追加は23年ぶりである。

 胆道癌は、その発生部位から胆管癌、胆嚢癌、乳頭部癌に分けられるが、生命予後が極めて不良で有病期間が短く、消化器癌の中では胃癌、結腸・直腸癌、肝癌、膵癌に次いで多い癌腫である。近年、画像診断技術の急速な進歩で早期に癌治療を行うことが可能となり、生命予後の向上に大きく貢献しているが、こうした画像診断技術を用いても胆道癌の早期発見例は少なく、大半は閉塞性黄疸を伴った進行癌で発見される例が多いのが現状である。そして胆道癌は、外科的な切除術が唯一の根治治療ではあるが、多くは診断時点で既にリンパ節転移などが認められ、手術適応可能例が少ないといわれている。

 再発例を含めたこれらの症例では、放射線療法や化学療法などが行われるが、添付文書上、日本で胆道癌へ適応を有している抗癌剤は、テガフール・ウラシル配合剤(UFT、商品名:ユーエフティー)、塩酸ドキソルビシン(DXR、商品名:アドリアシン)、シタラビン(Ara-C、商品名:キロサイド、他抗癌剤との併用時のみ)の3剤しかなく、化学療法の選択肢が少ないことが専門家の間で問題視されていた。

 今回、胆道癌への適応追加が認められたゲムシタビンは、1999年に非小細胞肺癌を適応に承認され、2001年に膵癌への適応が追加になった薬剤であり、特に膵癌の化学療法では標準治療薬として位置付けられている。癌細胞が増殖する際のDNA合成過程においてDNAに取り込まれ、この合成を阻害することで癌細胞死を引き起こす代謝拮抗性薬剤である。投与後の血中濃度の消失半減期は20〜40分で、血中およびその他の組織のシチジンデアミナーゼによって、大部分が活性を有しないウラシル体に代謝され、尿中排泄される。ゲムシタビンは現在、米国やドイツなど欧州の世界90カ国以上で承認発売されている。

 今回の胆道癌への適応追加に向けた臨床試験では、ゲムシタビン単剤および他の抗癌剤(フルオロウラシルなど)との多剤併用療法において有効性が確認された。しかし、外科手術後の補助的化学療法に使用する場合においては、現在までのところ有用性や安全性は確立していない。ちなみに本臨床試験は、日本を含めた世界各国で実施されたが、胆道癌に適応が追加されたのは日本が最初である。

 今後、胆道癌の治療において、ゲムシタビンの使用頻度は高くなるものと考えられるが、他の抗癌剤と同様、発現する可能性が高い重篤な副作用(特に用量規制因子である骨髄抑制など)に十分注意するとともに、患者や患者家族に対して事前に十分な説明を行うことが必要不可欠である。