「ファンガード点滴用」の添付文書(2006年4月改訂・第10版)から。下線部が今回の改訂部分。

 2006年4月20日、抗真菌薬としては日本で初めて、ミカファンギンナトリウム(商品名:ファンガード点滴用)に小児への用法・用量追加が承認された。

 カンジダ、アスペルギルス、クリプトコッカス、ムコールなどの病原真菌による深在性真菌症は、化学療法中の癌患者や免疫抑制薬を投与中の患者に発症しやすい日和見感染症で、これらの患者の予後を大きく左右する要因の一つとなっている。深在性真菌症の治療には、経口および注射(点滴)の抗真菌薬が使用される。具体的には、ミカファンギンのほかに、アムホテリシンB(商品名:ファンギゾンほか)、フルシトシン(商品名:アンコチルほか)、フルコナゾール(商品名:ジフルカンほか)、ミコナゾール(商品名:フロリードほか)、イトラコナゾール(商品名:イトリゾールほか)、ホスフルコナゾール(商品名:プロジフ)、ボリコナゾール(商品名:ブイフェンド)の計8種類の抗真菌薬が使用されている。

 中でも、抗真菌活性やスペクトル、組織移行性などの面から、ほかの抗真菌薬に比べて有用性や安全性が優れている薬剤として評価されているのが、フルコナゾール、イトラコナゾール、ホスフルコナゾール、ボリコナゾールなどのアゾール系抗真菌薬である。アゾール系抗真菌薬は、真菌のチトクロームP450に特異的に作用し、真菌細胞膜の主構成成分であるエルゴステロールの生合成を阻害することで静菌的に作用する。

 しかし近年、アゾール系抗真菌薬が十分な効果を発揮しないアスペルギルス症や耐性カンジダ属などの増加により、治療に苦慮する深在性真菌症が増加している。こうした真菌にも有効な薬剤として2002年12月に登場したのが、新しい分子構造および作用機序を有するキャンディン系抗真菌薬のミカファンギンである。適応は、「アスペルギルス属およびカンジダ属による真菌血症、呼吸器真菌症、消化管真菌症」で、真菌の細胞壁の主要構成成分(グルカンポリマー)の産生に関与する1,3-β-グルカン合成酵素の活性を特異的に阻害することで、抗真菌作用を発揮する。ミカファンギンは、アスペルギルス症や耐性カンジダ属に対する抗真菌効果が高いことに加え、作用点である1,3-β-グルカン合成酵素が宿主のヒトには存在しないため副作用が少なく、安全面での評価も高い。

 ただしこれまでは、いずれの深在性抗真菌薬も適応が成人に限られており、小児に適応を持つ薬剤は存在しなかった。このため、小児領域では、薬物動態も十分に把握されておらず、有効性や安全性へのエビデンスも乏しいままに、成人用の抗真菌薬を手探り状態で使用していたのが現状だった。そこでミカファンギンは、国内で小児(乳児〜学童)を対象とした臨床試験を実施、薬物動態は成人と差はなく、有効性や安全性も成人と同様であるとの結果が得られたことで、今回の小児への用法・用量の追加となったわけである。

 ミカファンギンを小児に使用する場合には、1日量6mg/圓鮠絽造箸掘体重50坩幣紊隆擬圓任論人の上限である1日量300mgを超えないように注意する。なおファンガードは、従来から「点滴用50mg」「点滴用75mg」の2製剤が販売されているが、今回、小児への適応が追加となったことに併せ、近く「点滴用25mg」製剤が発売される予定である。