「ザイボックス錠600mg」の添付文書(2006年4月改訂・第8版)から。下線部が今回の改訂部分。

 2006年4月20日、合成抗菌薬のリネゾリド(商品名:ザイボックス錠600mg、同注射液 600mg)に、新たに「メチシリン耐性黄色ブドウ球菌MRSA)感染症」の適応追加が承認され、併せて添付文書も改訂された(右写真)。具体的には、これまでの適応症である「バンコマイシン耐性腸球菌による各種感染症」に加え、「MRSAによる肺血症、深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷および手術創等の二次感染、肺炎」が追加されている。

 リネゾリドは2001年5月、日本で初めてバンコマイシン耐性腸球菌の適応を取得した抗菌薬として、経口剤(錠剤)と注射剤(点滴静注液剤)が承認・発売された。1980年代以降、多剤耐性菌の一種であるMRSAが院内感染の原因として問題となったが、当時、その特効薬として塩酸バンコマイシン(商品名:塩酸バンコマイシン)が登場。しかし同薬が多用されたこともあり、米国では90年ごろから、日本では 96年から、バンコマイシン耐性腸球菌が出現した。その“切り札”として登場したのが、リネゾリドである。

 このリネゾリドが今回、MRSA感染症にも適応を拡大した。現在日本で使用可能な抗MRSA薬は、前述のバンコマイシンのほか、硫酸アルベカシン(商品名:ハベカシン)、テイコプラニン(商品名:タゴシッド)があり、リネゾリドは、抗MRSA薬の注射剤としては4剤目、経口剤としては初めての薬剤となる。リネゾリドは作用機序がユニークであるため、既に発売されている3剤の抗MRSA薬を含め、他の抗菌薬と交叉耐性を示さないのが特徴である。

 リネゾリドが開発された米国では、グラム陽性菌に対する抗菌力が強く、MRSA感染症にも有用性が高いことから、既に広く臨床的に使用されている。また同薬は、(1)腎機能低下例においても用法・用量の調節の必要はない、(2)錠剤の生物学的利用率がほぼ100%であるため、静脈内投与から経口投与に同じ用量で切り替えることができる−−といった薬物動態面での特徴も持っている。

 このようにリネゾリドは、既存の抗MRSA薬に比べて使用しやすく、かつMRSA感染症治療に初めての経口剤であることから、今後使用頻度が増加する可能性がある。しかし一方で、同薬は今後ともバンコマイシン耐性腸球菌の最終治療薬としての位置付けに変わりはないことから、耐性菌出現を回避するために厳重に使用を制限するなど、適正使用の必要性が指摘されている。

 また副作用面では、既存の抗MRSA薬のような腎障害発現は少ないものの、14日間以上の投与により血小板減少症など骨髄抑制の発現頻度が高くなる傾向が認められている。このことから、リネゾリドの添付文書上では、投与前に既に骨髄抑制が確認されている患者、骨髄抑制作用のある薬剤との併用が必要な患者、既に感染症治療のために他の抗菌薬を投与している患者、14日間以上の投与が必要な患者には、慎重に投与し、他の患者に投与する場合を含めて週1回程度の血液検査を実施することが必要とされている。また、投与期間中は常に患者状態を確認し、骨髄抑制発現防止に努めなければならない。

 さらに、28日間以上投与すると視神経障害が発現し、時に視力喪失に進行する場合があるので、重症感染症であっても原則として28日間を投与限度とする。日本の添付文書には、推奨投与期間は記載されていないが、米国のリネゾリド添付文書では、各種 MRSA感染症では10〜14日、VRE感染症(菌血症の併発を含む)では14〜28日が推奨されている。