レジオネラ肺炎への適応が追加された「クラリス」

  2006年2月23日、マクロライド系抗菌薬クラリスロマイシン(商品名:クラリスクラリシッド)に、レジオネラ感染症レジオネラ肺炎)の適応追加が承認され、これに合わせて添付文書も改訂された。

 レジオネラ感染症は、1976年、米国フィラデルフィアでホテルのクーリングタワーの冷却水の飛散から原因不明の集団肺炎が発生し、34人が亡くなった事件から世界的に注目された感染症である。その後、米疾病対策センター(CDC)が肺炎の原因菌となった新しい病原微生物レジオネラ属を同定したことから、レジオネラ肺炎と名づけられた。

 レジオネラ自体は一般に菌数は少ないものの、世界中の水系、土壌に分布しており、特にクーリングタワー、循環温泉水、24時間風呂などの人工環境の中では、アメーバ、微細藻類などの共生微生物によりレジオネラ菌が増殖し、自然界と比較して菌量も多くなっていることが報告されている。日本でも、ここ10年間で循環温泉水や24時間風呂を使用した温泉施設などでレジオネラ肺炎が散発し、大きな社会問題となった。

 細菌学的にいうと、レジオネラ肺炎の治療には、細胞内移行性の良いマクロライド系抗菌薬、ニューキノロン系抗菌薬が有効であり、次いでテトラサイクリン系抗菌薬も有効とされる。一般的な市中肺炎治療に使用頻度が高いβ-ラクタム系抗菌薬やアミノグリコシド系抗菌薬は細胞内移行性が不良であることが確認されている。

 しかし臨床的に見ると、わが国でレジオネラ肺炎に適応を有している抗菌薬が少ないことから、日本化学療法学会が、レジオネラ肺炎に対する抗菌薬の適応拡大を厚生労働省に要望。これを受けて、厚生労働省医政局研究開発振興課は、製薬会社に追加効能取得の可能性を打診した。そして製薬会社は、レジオネラ肺炎への有用性に関する表1のような資料を提示した。

表1 クラリスロマイシンのレジオネラ肺炎に対する有用性

1. 英国では、すでにレジオネラ感染症が適応として承認されている。
2. 米国では、肺炎の適応菌種としてレジオネラ属が認められていないものの、添付文書上では抗菌力を有する菌種として記載されている
3. 米国胸部学会や米国感染症学会の肺炎ガイドラインにレジオネラ肺炎治療薬の一つとして明記されている。
4. 「厚生省レジオネラ肺炎診断基準と診断・検査及び治療指針」(平成4年4月)において、具体的な処方例が記載されている。

 この資料提出を受けて厚生労働省は、通常の臨床試験を新たに実施することなく「適応外使用に係る医療用医薬品の取扱いについて」に基づき、クラリスロマイシンの追加適応について「レジオネラ肺炎」を承認した。なお、今回のレジオネラ肺炎に関する適応追加は、クラリスロマイシンのほか、シプロフロキサシンなどのニューキノロン系抗菌薬にも同時期に承認されている。