ザ☆ディベート、第5回「高齢者肺癌、手術か放射線療法か」の投票の最終集計がまとまりました。ここでは、最終集計結果とコーディネーターである坪井先生による総評を紹介します。(投票者からのコメントはこちら

「第5回 高齢者肺癌、手術か放射線療法か」最終集計結果(2013年2月5日現在、n=1690)


コーディネーターの総評

■投票結果から
 標準手術できるかできないかという観点からCASE1と2を設定しましたが、投票結果は、鏡面像のように真逆になりました。肺葉切除可能例では手術療法を選択される方が多数派でしたが、肺葉切除不能例では放射線療法(体幹部定位放射線療法、以下SBRT)を優先的に選択されるという傾向でした。

 CASE1の肺葉切除可能例においては、根治性、局所再発のリスクを考慮した結果が、このような形にあらわれたのだと思います。手術は長い歴史の中で実績が積み重ねられていますが、SBRTの歴史は短く、施設間格差など技術的に十分成熟しきっていない点もあるでしょう。むしろ、現在の肺切除術が20年前に比べて明らかに低侵襲になっている現状を考えれば、CASE1についてはもう少し手術選択派が多くても良いのではないかと感じました。

 一方、CASE2の肺葉切除不能例については、手術を選択する場合は部分切除もしくは区域切除となります。部分切除の場合、肺葉切除に比して3倍の局所再発リスクがあることが過去に示されています。SBRTも局所再発リスクを同等と考えれば、侵襲度が軽いイメージが強い放射線を選ばれるのは、時代の趨勢という印象を受けました。また、手術できない人には放射線がゴールデン・スタンダードですので、放射線選択(支持?)派が多いのは当たり前とも言えます。ただし、先述したように、手術そのものが時間短縮され低侵襲になっている現状を考えると、部分切除で完全切除可能な症例では手術選択派の支持があっても良いのではないかと思いました。

■掲示板のコメントから
 先生方からのコメントを拝見すると、さまざまなご意見がありました。コメントでも指摘されているように、SBRTについては、治療後数か月から1年、2年の晩期毒性や肺門部(比較的太い肺動静脈に近接した部位)照射の有害事象など、現状では問題となる部分があります。しかし、重粒子線の活用など技術革新を重ねて、SBRTは今後良い方向に進歩していくと思います。一方、現在は病期IA期肺がんに対しては肺葉切除が標準治療となっていますが、小型のがん、特に転移能を持たない非浸潤癌に対する縮小手術の妥当性、手術そのものの必要性など今後も外科手術に関連した研究は継続されます。また、個別化医療の流れの中、手術で採る組織標本は、乳がんなどと同様に術後補助療法や再発後の治療選択に益々重要な役割を担っていくことになるでしょう。

 設定や条件が加わることで判断が変わるという指摘が多くみられました。もっともな御意見です。年齢を重ねるほど、併存疾患、体力、精神面などの個人差が大きくなります。手術、SBRTそれぞれの治療のメリット・デメリットを把握して、一人ひとりの患者さんに適した治療を選択、提供することが肝要です。今回のような情報ツールを用いて、今後も手術、放射線療法の進歩など新しい情報をキャッチアップして、日々の臨床に役立ていただければ幸いです。

横浜市立大学附属市民総合医療センター 呼吸器センター外科 坪井正博