ザ☆ディベート、第3回「日本人における2型糖尿病の第1選択薬は?」の投票の最終集計がまとまりました。今回は票の偏りが大きく、「インスリン抵抗性改善薬」を推す声が7割を超えました。

 ここでは、コーディネーターである河盛先生による総評と、投票期間の後半1週間に寄せられたコメントの一部を掲載します。

「第3回 日本人における2型糖尿病の第1選択薬は?」中間集計結果(2012年12月9日現在、n=1289)


コーディネーターの総評

 今回の私ども3人はつい最近まで同じ医局で一緒に若手を教育してきた。このような機会にそれぞれの立場に立って、意見を述べることは自らの勉強にもなる。

 2型糖尿病の治療法は多彩だ。しかし、いずれの治療法から開始するにしても、そのターゲットとなる臓器は「肝」であることを強調したい。空腹時血糖値が高いことは、深夜に肝・糖放出率が全身・糖取り込み率を上回っていることを、さらに食後高血糖は肝・糖取り込み率が不十分であることを表している。

 これら異常点を是正するには、

  1. 膵β細胞から分泌されたインスリンが流入する肝でのインスリン作用を高めること、すなわちインスリンによる肝・糖放出率を抑制し、流入するブドウ糖の肝での取り込み率を高めることが必要であり、その対応策としては食事・運動療法による脂肪肝などの改善や、インスリン抵抗性改善薬の使用がある。
  2. 食後の肝への急速なブドウ糖流入を緩徐にすべく、単純糖質の摂取制限、食物繊維を食事の最初に摂ること、α-グルコシダーゼ阻害薬の使用などがある。
  3. 肝にインスリンを多く流入させるべく、インスリン分泌促進薬を用いる。
  4. 肝に流入するインスリン・グルカゴン・ブドウ糖のカクテルの比率を改善し、肝での糖処理能力を高めることが可能となった。私どもは、DPP-4阻害薬がインスリン分泌を高めるというより、むしろグルカゴン分泌を抑制し、食前、食後血糖応答を改善することを発表してきている。

 近年は、臨床医学の疑問を基礎医学で解明し、さらにただちに臨床に生かすというサイクルがとても速く回転している。たとえば私どもは、インスリン抵抗性に対応し、インスリン分泌力を代償性に増加する機序の解明中に、膵β細胞のオートファジー(autophagy) が重要な役割を果たすことを初めて解明した1)。このマウスでの基礎研究は速やかに臨床にフィードバックされた。膵移植ドナーから得た膵β細胞での検討により、2型糖尿病患者の膵島ではオートファジー機構の不全があること、メトホルミンの添加がオートファジー機構の不全を改善することが認められた2)。この作用機序は、長年臨床でメトホルミンを用いている医師が経験的によく知っている「インスリン分泌保護作用」と一致する。

 インスリン抵抗性の臨床的指標として、「朝食前血糖値とインスリンレベル(IRI)から計算されるHOMA-R を用いて薬剤選択する」とのご意見をよくいただくが、同じ医療費でより効率よく判断するなら、HbA1c、来院時食後血糖値、IRI の組み合わせがより多くの情報を提供してくれる。これからの診療は、できうる限り血糖値を正常域に保持し、かつ薬剤による低血糖を決して起こさないこと、を目指したい。

1)Ebato C, et al: Cell Metab .2008;8:325-332.
2)Masini M, et al: Diabetologia. 2009;52:1083-1086.

順天堂大学大学院 教授・スポートロジーセンター センター長 河盛隆造


代表的なコメント(中間集計後のコメントを投稿時間順に並べています)

◆II型糖尿病ではインスリン抵抗性を改善させることが理にかなっているように思えます。[ペンネーム:ディーエムミチリョウ−2012年12月3日12時29分]

◆メトホルミンの方がコストを低下させることが明らかであるから支持する。メトホルミンはまた、最近、精神病患者の肥満や多嚢胞性卵胞患者への有効性も指摘されているため大変に興味がある薬物である。[ペンネーム:札幌クライトン−2012年12月3日13時35分]

◆ガイドラインを優先したいと思います。[2012年12月3日13時38分]

◆インスリン分泌促進薬は耐性が出現する。メトホルミンに抗癌作用があるのは初耳です。[ペンネーム:ばーちゃん−2012年12月3日14時03分]

◆患者によります。抵抗性高い人は当然メトフォルミンから開始し分泌不全が主体ならDPP4阻害薬などの分泌促進薬から開始します。[ペンネーム:もっちゃん−2012年12月3日15時05分]

◆まずは膵β細胞に負荷をかけない治療が基本と思われるため。[2012年12月3日23時48分]

◆日本人の糖尿病治療としても、世界基準と同じく、インスリン抵抗改善薬から投与すべきと考えます。この間に生活習慣の改善とともに、ベータ細胞が疲弊から復活するのではないかと考えるからです。程よいコントロールにより、中小血管障害の進展も防げると思いますし、分泌促進薬は、抵抗改善薬の効果を見てからでも遅くないように思います。[ペンネーム:yappy−2012年12月4日12時57分]

◆血糖依存性のDPP-4阻害薬は、非常に安全に使用できるため、重度の肥満の少ない日本では第1選択薬として相応しいと考えます。[ペンネーム:イノジン−2012年12月4日14時49分]

◆抗癌作用は今後重要な役割になりそうですね。[2012年12月4日17時01分]

◆DPP4阻害薬の登場でインスリン分泌促進薬の立場が好転した。DPP4阻害薬は単独では低血糖の発現が少ない。そのほかの副作用も少ない。過去のインスリン分泌薬のその他の欠点、SU剤などでのインスリン分泌の枯渇による2次無効などの問題も克服した。今後の主流になると思います。他方、インスリン抵抗改善薬は、適応年齢の制限、副作用も多く問題が多いと感じます。[ペンネーム:kon−2012年12月4日17時21分]

◆可能な限り末梢のインスリン濃度は必要最小限とし、血糖降下作用以外にも良い作用が報告されているBG剤を使用したい。[ペンネーム:ゆうた−2012年12月7日16時05分]

◆FBSが高いのは、基礎インスリン分泌障害によるからインスリン分泌促進剤が適当であるという理論には無理があると思われるが。[2012年12月7日21時45分]

◆インスリン抵抗性改善の方が生体にとって長期的な予後が良いと思う。[ペンネーム:cycle−2012年12月8日12時28分]

◆患者によるとは思うが、インスリン分泌が十分にある前提なら、基本的にはインスリン分泌促進薬を使用すると思う。[ペンネーム:タケユキアントラーズ−2012年12月8日15時20分]