遺伝子検査を受け、その結果を見た人は、おのずとトレードオフについて考えるようになるだろう。たとえば、心臓病のリスクが高いとわかった場合、1日にグラス1杯のワインを飲むことは、その人にとって適切なプロトコルになる。適量のアルコール、特に赤ワインを飲むことは心臓病のリスクを下げるからだが、一方で、アルコールは乳がんのリスクを高めることがわかっている。これがトレードオフであり、あなたは医師とともに、その利害得失を比較して、自分に合った健康プランを立てることができる。

 遺伝子検査を試してみるべきかどうか、それは個人が自分の意思で決めることだ。自分の家族の病歴が不確かで、ほかにその情報を得る手段がないのなら、遺伝子検査を検討すべきかもしれない。原因遺伝子がわかっている病気、たとえば、乳がん、卵巣がん、テイ=サックス病、ハンチントン病などについては、遺伝子検査で早期に発見し、必要な手段を講じることをお勧めする。どこで検査するにしても、遺伝子カウンセリングを併せて受けことが欠かせない。それは、その人のプロファイルを理解する助けとなるばかりでなく、過剰な心配をコントロールする助けともなる。

 私もナビジェニクスの遺伝子検査を受け、いくつか興味深い結果を得た。脂質の量は正常で、総コレステロール値は200未満(正常値)だったが、心血管疾患に対するリスクは平均以上だった。そこで私は主治医と相談して、クレストール(スタチン系薬剤の一つで、高コレステロール血症の治療薬)を服用することにし、子どもたちは私をフライドポテトから遠ざける役目を買ってでた。

 私がクレストールを服用するようになった年に、スタチンはコレステロールを下げるだけでなく、体内の炎症も抑えることが、JUPITER研究によって明らかにされた。現在、炎症マーカーとコレステロール値が低い人に、スタチンがどう作用するかが調べられている。その影響はほかにも及ぶのだろうか?

 私の遺伝子プロファイルは、大腸がんのリスクが平均よりわずかに低いことも示していたが、家族に聞いてみると、近親者に大腸がん患者がいたことがわかった。そこで私は、国が推奨する50歳を待たず、43歳で大腸内視鏡検査を受けた。家族歴というあまりにも高いリスクを知り、待っていられなかったのだ。遺伝子検査を受け、家族歴を知ることにより、健康に対する見方が変わった。結局、ポリープを切除することになった。ポリープは異常に成長した組織で、がんになる可能性がある。私のポリープはがんになるだろうか? それは誰にもわからない。だが、そうなるまで待つ必要があるだろうか? 私は積極的に介入し、健康を保つことにした。

 これこそ、一般の人々が健康に生きるための導き手として選んだ医師とともに、なすべきことなのだ。重要なのは、確かな家族歴と遺伝子検査である。残念ながら、家族歴は手に入れにくく、あったとしても、しばしば間違っている。前の世代は病気を忌むべきものと見なし、あえて語ろうとはしなかったので、正確な情報が伝わっていない可能性が高いのだ。

遺伝子検査の結果とどう向き合うか?

 ところで、遺伝子検査によって明かされた結果を、検査を受けた人は受け入れることができるだろうか? それについては、誰もが不安に思うだろう。たとえば、ApoE遺伝子のe4変異体を持っていると、アルツハイマー病のリスクが高まることが知られているが、自分がそれを持っているとわかったら、どうだろう? 健康に関する悪い知らせや将来のリスクに、自分がどう反応するか予見できる人はほとんどいない。

 しかし、ここに勇気づけられる事実がある。ボストン大学医学部の研究者らが、親がアルツハイマーで、自分もApoE遺伝子のe4変異体を持つと告げられた人について調べたところ、短期的な落ち込みはそれほど深刻ではないことがわかったのだ。