遺伝子検査で一人ひとりに合った薬物治療が可能に

 まだその数は少ないが、遺伝子検査を行う会社も出現しつつある。私が設立した会社、ナビジェニクスが使命とするのは、人々が自分の遺伝情報を知ることによって、より健康になるのを手助けすることだ。私は現在の技術に信頼を寄せているが、診断できる疾病の数が増え、変異と疾病との新たな関連が明らかになり、薬理遺伝学のデータが増すにつれて、その技術はいっそう有益なものになっていくだろう。後に説明するが、薬理遺伝学とは、薬への反応に遺伝子の変異が及ぼす影響を研究する、薬学の新分野である。

 ナビジェニクスの検査結果は、一般の人でも容易に理解できるように書かれており、それを受け取った人は、日々更新されている同社のウェブにアクセスして、自分に関係のある新情報を得ることができる。また、遺伝的リスクを抱えていると診断された病気について、どうすればリスクを減らせるかといったことや、ある種の薬の適量と反応、医師に伝えるべきこともわかる。報告書は読みやすく理解しやすいが、そのデータは非常に広範囲に及ぶので、理解し、前進の助けとするために、医師とともに検討することを私たちは顧客に勧めている。また、検査の結果について、特別な訓練を受けたナビジェニクスの遺伝カウンセラーと話し合うことも勧めている。そうした情報によって、人々が行動を変え、より健康的な生活を送るようになることを、私は願っているのだ。

 遺伝子検査がもたらすもう一つのメリットは、個々人に合わせた薬物治療ができるようになることで、プロテオミクスの発展とともに、その正確さは増していくと期待できる。「薬理遺伝学的検査」では、特定の薬への反応に影響する遺伝子マーカーを探し、分析する。ある薬が深刻な副作用を起こすかどうか、あるいは、ある薬が効くかどうか、適切な量はどのくらいか、といったことがわかるのだ。そうした知識は、自分にぴったりの薬物治療を選択する助けになるだろう。

 遺伝子検査はそれを受けた人に強い動機を与える。米国人の30パーセントが肥満だから、あなたが肥満になる確率は30パーセントだ、と言っても、あなたにとっては無意味だろう。しかし、あなたの遺伝子から判断して、肥満になる確率は60〜80パーセントだと言えば、何らかの意味があるのではないだろうか? それはあなたを十分刺激して、体重増加につながる生活習慣にもっと注意しようという気にさせるかもしれない。おなかを引っ込めようという気にさせるかもしれない。それこそが、遺伝子検査の力なのだ。

 別の例を挙げよう。もし、心臓発作を起こす確率が90パーセントだとわかったら、あなたはそれを避けるために、できることをすべてやるだろう。しかし、「米国人の死因で一番多いのは心臓病である」といった包括的な統計を聞いても、おそらく何もしないはずだ。自分の遺伝子プロファイルが心臓病に対してリスクが高いという事実は、一般的な統計よりはるかに説得力があるのだ。(次回に続く)