13年にわたる努力の後、ヒトゲノム・プロジェクトは2003年に、予定より2年早く、解読の完了を宣言した。ジェームズ・ワトソンとフランシス・クリックがDNAの二重らせん構造を発見してからちょうど50年目だった。文字の並びが単語になるように、これらのブロックの配列が、遺伝子を作り上げている。今や競争の焦点は、遺伝子の意味の判読へと移った。遺伝子は、体の働きを分子的に遠隔操作し、たとえば瞳の色や、肥満やアルツハイマー病になる可能性など、あなたの多くの側面を決めている。「ゲノム」とは、ある生物を作り、活動させ、維持するための、ひとまとまりの遺伝性の指示であり、生物を次の世代へとつなげるものだ。

 地球上のあらゆる種は、独自のゲノムを持つ。イヌのゲノム、ネコのゲノム、バラ、ウサギ、風邪ウイルス、大腸菌のゲノム、といった具合だ。ゲノムにはある生物を作るために必要な情報がすべて含まれる。一卵性双生児やクローンは別として、人は皆、独自のゲノムを持ち、シカ、オークの木、ワシも同様である。ゲノムは種によって異なるが、個体によっても異なるのだ。

 ヒトゲノム・プロジェクトにより、驚くべきことに全人類のDNA配列は、99.9パーセントまで同じであることがわかった。一塩基多型SNPs、「スニップス」と発音する)は、DNA配列が変異したもので、人間の場合、およそ約30億個の塩基対のうち、数百万個くらい発生する。SNPsは、言うなれば、遺伝の指示の変更であり、変更された場所によっては、病気、環境因子、薬品に対する反応が変わってくる。たとえば、ある遺伝子のGがAに変わると若ハゲになりやすい、といった具合だ。

 中には、セリアック病、嚢胞性線維症、ぜんそくなどのマーカー(遺伝的性質の目印)になるSNPsもある。SNPsは、それらの病気を引き起こすわけではないが、発症するリスクが高いことを示している。ヒトゲノム・プロジェクトの完了以降、数百件の研究により、SNPsと数百の病気の特徴や状態との関連が発表された。これらの研究が土台となって、唾液から抽出したDNAで個人の遺伝子マップを調べられるようになり、パーソナル・ゲノム産業の扉が開かれた。

 遺伝子検査を行う企業の創設者の1人として、私はその技術を信頼している。検査では、疾病のリスクを示すSNPsを探す。検査によってわかるのは、その人の「構成要素」のおおまかなリストだけで、それらが体の中でどんな作用をしているのかはわからないが、それでも重要な基本情報を得ることができる。自分を構成する要素について知れば知るほど、人々は健康に関して、より適切な判断を下せるようになるだろう。(次回に続く)