近年、炎症という言葉をよく耳にするようになった。専属の広報係でもいるかのごとく、健康関連の記事では頻繁に「炎症」と「抗炎症」という言葉を見かける。したがって、読者の皆さんも、炎症が何であるかについては漠然とわかっておられるだろう。だが、もう少し詳しく知りたいのではないだろうか。

 馴染み深いのは、切り傷や打ち身がもたらす炎症で、赤く腫れ、痛みを伴う。また、肉離れや骨折、それに日焼けの痛みや関節痛も炎症によるものだ。アレルギーによる、くしゃみ、かゆみ、湿疹、じんましんなども炎症の一種である。しかし、時として炎症は、自覚されないまま、組織やシステムの深部を侵すことがある。

 本来、炎症は、ばい菌やウイルスや毒素の侵入に対抗するための、自然な防御反応なのだが、度を超すと、体に害を及ぼす。炎症が広がったり、一向に収まらなかったりすると、免疫システムが混乱して、慢性的な障害や疾患につながる恐れがあるのだ。免疫システムは体内の暖房装置のようなものだが、ある温度に達してもスイッチが切れなかったら、体内は異常に熱くなり、不快で危険な状態になる。そうなると、さまざまな因子が悪影響を及ぼし始めるのである。

 炎症は、疾患や苦痛とは無関係のように見られがちだが、数々の研究により、慢性的な炎症は命に関わることが証明されている。ある種の炎症は、深刻な進行性の病気(心臓疾患、アルツハイマー、がん、自己免疫疾患、糖尿病)や老化と関係しているのだ。

 炎症と酸化ストレスには密接な関わりがある。酸化ストレスとは、器官や組織の「錆び」のようなものだ。酸化は体の外側でも内側でも起こる。外側で起きると、しわや老化をもたらし、内側で起きると、血管を硬くし、細胞膜を傷つけ、重要な器官を破壊する。もちろん人間の体は、雨や日光にさらされた金属のように錆びるわけではないが、「錆び」というたとえは、酸化による化学反応をうまく言い表している。酸化は日々生きる過程で自然に起きることだと先に述べたが、過剰に起きると問題が発生する。技術が進めば、炎症の過程と、それを改善する方法が、さらに解明されるだろう。炎症を数値化し、良好のものか、悪性のものかを識別するための指標作りが今後の目標となるはずだ。

 2008年に結果が発表されたJUPITER研究は、疾患に潜む炎症に照準を合わせた初めての研究だった。心臓発作はコレステロールによってではなく、度重なる炎症によって起きるのだ。その過程は、冠状動脈やその他の血管の変化が関与していて複雑だが、炎症は間違いなく、血管疾患のリスクを高める。

 不要な炎症を避けるのが大切だとわかれば、次は、炎症はどこで、どのように起こり、どうすればコントロールできるかが問題となる。ここで問われるのが、その人の職業だ。職業によって、死ぬリスクが高いものがある。林業やカニ漁に従事する人やフットボール選手の死亡率が高いと聞いても、誰も驚かないだろう。こうした職に就いている人には、徐々に衰えて老年期を迎えるのではなく、若いうちに亡くなる傾向が見られる。

 炎症はさまざまな職業の死亡率に、どう関わっているのだろう。そして、どの程度の炎症がダメージをもたらすのだろう。フットボール選手について見てみよう。彼らは試合時間が長く、多くの攻撃を受けたり、しかけたりする。2006年に公表された、フットボール選手に関する統計データは驚くべきものだった。