熊本大学付属病院癌診療センター・センター長の佐々木治一郎氏

 日常生活や仕事を継続したいという患者のニーズ、癌診療拠点病院の設置や癌そのものに対する関心の高まりという社会的なニーズによって、外来化学療法の必要性が高まっている。では、この外来化学療法の体制をどう構築すればよいか。熊本大学付属病院癌診療センターセンター長の佐々木治一郎氏は、第48回日本肺癌学会総会で熊本大学外来化学療法センターの設置から運営の概要と、高齢者を対象とした進行肺癌治療のエビデンスについて講演した。

 まず佐々木氏は、一般外来での問題点を、(1)患者の物理的、時間的、心理的満足度が低い、(2)外来治療加算がとれない、(3)治療中の緊急対応が困難、(4)安全性チェック機構がない──とし、ごった返す外来処置室で治療せざるを得ないことで困窮してしまう事が多いこと、薬剤の量や投与方法が医師個人の裁量にゆだねられてしまうことを指摘した。

外来化学療法センター設置と運営の実際

 熊本大学では、2005年6月に外来化学療法検討ワーキンググループを設置。助教や講師など実務担当者を中心に、具体的に配置図や内規、システムの検討を開始した。05年10月には設置準備委員会が設立され、オーダリングシステムの構築や外来化学療法のマニュアルの作成、各職種毎のフローチャート作成などを行った。その後、運営委員会を設置して同意書やパンフレットの作成、有害事象マニュアルの作成なども行っている。

 センターの位置は外科外来の隣で、内科外来はエレベーターを降りてすぐと、患者の移動距離が少ない。5床の液晶テレビ付きベッドやメディカルCDを流すなど、アメニティを充実させているが、佐々木氏は、「飴玉を置いて自由に食べてもらっているが、これが患者に非常に好評」と患者の満足度を上げるコツを紹介した。

図1 熊本大学外来化学療法センターで作成した使用説明同意書と外来化学療法マニュアルの概要(画像をクリックすると拡大します)

 熊本大学の外来化学療法センターでは、使用する際に2つの同意書が必要で、1つは化学療法のレジメンの同意書。もう1つが、センターで治療を受けるための同意書だ(図1)。センターの利用には費用が発生することなどから、外来化学療法について理解した上で、その治療が患者自身に見合うものかどうかを判断してもらうためだ。

 外来化学療法を初めて実施する医師に向けても、センターのマニュアルを作成した。特に重要なのは、外来療法を中止する際の対応法だという。レジメンオーダーシステムについては、薬剤部の協力を受けて前日の4時まで入力可能なシステムとしている。

 有害事象マニュアルも作成し、急性期の有害事象から、中期、末期の有害事象までを網羅。同センターでは、血管外漏出時には、穿刺部がはっきりと分かるように、穿刺部を残したままでリンデロンの局注を実施し、皮膚科医師の到着を待つ仕組みにしている。

 診療科別の利用状況では、多いのが乳腺内分泌外科で43%。呼吸器内科は15〜20%ぐらいで、泌尿器科も19%と高い。現在、1カ月あたりのべ200例を超えており、増床を検討している。ただし、問題点として、外来加算がとれないIVHポートを利用する症例については、センターで対応できない現状だ。

 最近、佐々木氏らは、化学療法レジメン評価委員会を設置し、標準治療に準じているかどうかを客観的に評価する場を設けた。今後、新たなレジメンを実施するには、委員会で評価した後にレジメンオーダーシステムに登録される体制を整えている。