新たに作成された子宮頸癌治療ガイドライン。04年に発行され、今回改訂版が発行された卵巣癌治療ガイドライン、06年に発行された子宮体癌の治療ガイドラインと併せ、婦人科腫瘍の治療ガイドラインが出揃った

 日本婦人科腫瘍学会は、10月16日、子宮頸癌治療ガイドラインをまとめたと発表した。婦人科領域では、2004年に発刊された卵巣がん治療ガイドライン、2006年に発刊された子宮体癌についで3番目のガイドラインで、日本の癌の治療ガイドラインとしては、9番目のものとなる。

 この子宮頸癌治療ガイドラインは、いわゆる“Q&A”形式のもので、「至適な手術法は何か?」から始まり、「治療後に再発した場合、どのような対応が推奨されるか」「Ia1期にはどのような治療が推奨されるか」といった質問に対し、これまで得られてきたエビデンスのレベルや検討委員会及び産科婦人科医の意見に基づき、回答を示した形だ。

国内外で異なった治療体系の発展

 作成委員会の委員長である藤田保健衛生大学病院副院長の宇田川康博氏は、「子宮頸癌については、国内外で治療法にギャップがあり、治療に関するエビデンスも少なく、レベルも低いことが、ガイドライン作成を困難にした点だ」と振り返った。

 特にポイントといえるのが、国内外で治療法にギャップがある点。日本ではもともと手術療法を中心に治療体系が出来上がってきた一方、欧米では放射線療法が中心となって体系が作られている経緯がある。

 例えば、今回のガイドラインでは、Ib期〜II期には広汎子宮全摘出術を推奨しているが、米国では、Ib期、IIa期は広汎子宮全摘出術か放射線療法(腫瘍径が4cmを超えるものは同時化学放射線療法)を推奨し、IIb期は同時化学放射線療法を推奨している。

 日本産科婦人科学会婦人科腫瘍委員会の報告は、1998年から2005年の、IIb期に対する治療の年次推移を発表している。この結果では、98年から2001年までの治療法では、9割以上が手術主体の治療であったが、2002年から放射線主体の治療例が急激に増加。手術主体の治療が約6割で、放射線主体の治療が約4割を占めるようになった。

 これは、2001年から2002年にかけて、海外で同時化学放射線療法の成績が発表されたことに起因する。高齢者の癌患者には手術療法の負担が大きいため、医師側からCCRTを勧める傾向もあるという。しかし、現時点では、CCRTは日本人に適しているかどうか確認されていないことから、ガイドラインは広汎子宮全摘出術を推奨した。なお、この推奨は、グレードAではなく、“グレードA'”。このグレードA'は、「明確なエビデンスは見出せないが、『臨床腫瘍学の常識』である」(専門医の常識)という位置づけだ。

 子宮頸癌ガイドライン手術小委員会委員長で、近畿大学奈良病院院長の井上芳樹氏は、手術に関するガイドライン作成上の問題として、「国内では病巣の完全摘除を目的として術式が絶えず工夫されてきたが、手術はランダム化比較試験にはなじまず、エビデンスの高い成績はない」とし、エビデンスは少ないもののときに臨床腫瘍学の常識としてグレードA'をつけた場合があるとまとめた。