昨今、癌の外来化学療法を実施している施設が非常に多くなっています。

 そうした治療を受けている患者さんを前にしたとき、薬局薬剤師だからといって、院外処方された薬のことだけを指導していればよいはずはありません。薬剤師としては、患者が受けているすべての治療について、治療効果や副作用についてしっかりモニタリングするのが使命です。

 とはいっても、特に抗癌剤に関しては、患者からの情報収集が難しいという実情があります。そこで今回は、院外処方せんに書かれた処方内容を読み解くことで、病院で注射してきた薬剤がある程度推察できるものを幾つか紹介したいと思います。

 癌の化学療法が実施されている可能性がある患者に、下記の◆のような薬が処方されていたら、⇒に示す抗癌剤が使用されている可能性があります。

 なお、ここで示した抗癌剤の中には、本来は、入院して使用すべきものも含まれますが、患者の希望などで、強引に外来で治療をしている場合があります。また、入院中に行った化学療法に起因する遅発性の副作用を予防・軽減するために、退院後に院外処方されている可能性もありますし、入院治療を行う前に、前もって院外処方されることもあります。


◆ステロイド点眼液
   ⇒ シタラビン(商品名:キロサイド)
 副作用で結膜炎が発生するため、併用されます。


◆下痢止め(ロペミン、半夏瀉心湯など)
   ⇒ イリノテカン(商品名:カンプト、トポテシン)
 イリノテカンは活性体になったあと、グルクロン酸抱合されますが、腸内細菌のβ-グルクロニダーゼによって分解され、再び活性体が大腸内で生成されます。これが、重篤な下痢の原因になると推測されています。半夏瀉心湯に含まれるフラボノイド配糖体は、腸内細菌のβ-グルコロニダーゼの活性を阻害するので、下痢を予防できます。


◆下剤
   ⇒ パクリタキセル(商品名:タキソール)
   ⇒ ビンクリスチン塩酸塩(商品名:オンコビン)
 これらの抗癌剤では便秘を起こしやすいので、下剤が処方されます。


◆ビタミンB6製剤(単剤もしくは末梢循環改善薬、精神安定薬などと併用)
   ⇒ ビンクリスチン(商品名:オンコビン)
   ⇒ シスプラチン(商品名:ランダ、ブリプラチン)
   ⇒ パクリタキセル(商品名:タキソール) など
 副作用でしびれが起こりやすいこれらの薬剤を使用する際に処方されます。内服薬との併用で、手足症候群の予防に用いられることもあります。


◆ジフェンヒドラミン10mg錠 5錠(1回のみの処方)
   ⇒ パクリタキセル(商品名:タキソール)
   ⇒ リツキシマブ(商品名:リツキサン) など
 過敏症を予防するための処方です。H1受容体とH2受容体の両方をブロックします。注射開始の30分前に経口投与されます。実際は、H2ブロッカーとステイロドの注射剤も用いますが、薬局でジフェンヒドラミンのみ処方されることが多くあります(H2ブロッカーは内服で処方されることもあります)。


◆抗ヒスタミン薬+解熱鎮痛薬
   ⇒ トラスツズマブ(商品名:ハーセプチン)
   ⇒ リツキシマブ(商品名:リツキサン)
 上記と同様ですが、発熱予防のために、イブプロフェンやアセトアミノフェンが処方されることもあります。しかし過敏症予防については、前投与の効果は証明されていません。


◆葉酸(0.5mg/日)または調剤用パンビタン末
   ⇒ ペメトレキセド(商品名:アリムタ)
 ペメトレキセドは、DNA合成に必要な葉酸の作用を阻害することで、癌細胞の細胞分裂を抑制し、抗腫瘍効果を発揮します。副作用を軽減するために、葉酸を必ず補充します。また院内では、必ずビタミンB12の注射をします。
 注意しなければならないのは、葉酸の投与量が0.5mg/日と少ないことです。葉酸製剤のフォリアミン錠は、1錠に5mgの葉酸を含むので、粉砕して「1日0.1錠分」を調剤することが必要になります。調剤用パンビタン末には、1g中葉酸が0.5mg含有されているので、こちらが処方される場合もあります。


笹嶋勝氏(日本メディカルシステム株式会社〔東京都中央区〕)ささじま まさる氏。大学病院でDI(医薬品情報管理)業務の責任者として8年間勤務した後、現在は、薬局チェーン「日本メディカルシステム」の学術部門長として勤務。東京薬科大学薬学部客員教授。日経ドラッグインフォメーションのウェブサイト「DIオンライン」にて「笹嶋勝の『クスリの鉄則』」を連載中。