日本人の胃癌による死亡率は、男女ともに1960年を境に減少傾向にあるが、2004年度の癌の部位別死亡率をみると、まだ男性では第2位、女性では第1位となっており、依然として死亡率の高い癌であることには変わりない。

 胃癌の胃壁深達度T分類で記載する。日本胃癌学会の「胃癌取扱い規約」第13版によるとT1は癌の浸潤が粘膜または粘膜下組織にとどまるもの、T2は癌の浸潤が固有筋層または漿膜下組織にとどまるもの、T3は癌が漿膜に浸潤しているもの、T4は癌の浸潤が他臓器に及ぶものである(「胃癌取扱い規約」第14版は2010年に出版される予定である)。

 リンパ節転移の程度はN分類で記載し、N0は転移を認めないもの、N1は1群リンパ節に転移を認めるが2、3群リンパ節には認めないもの、N2は2群リンパ節に転移を認めるが3群リンパ節には認めないもの、N3は3群リンパ節まで転移を認めるものである。

 胃癌のステージ分類はこのT分類とN分類、肝転移(H)、腹膜転移(P)、腹腔細胞診(CY)、遠隔転移(M)の組み合わせで決まる(下表)。

(画像をクリックすると拡大します)

●治療―手術

 「胃癌治療ガイドライン」(第2版、2004年、日本胃癌学会編)によると、ステージII、IIIでT3までの場合は定型手術、T4の場合は拡大手術が推奨される。定型手術後の5年生存率はステージが進むほど低下し、ステージIIで68.3%、IIIAで50.1%、IIIBで30.8%とされている。ただし、この数値は術後補助化学療法の標準治療が確立される以前のものなので、現在は改善している可能性が高い。

 術後補助化学療法が確立される前は、1群および2群リンパ節を郭清する標準的なD2郭清に、予防的に大動脈周囲リンパ節郭清を加える拡大郭清が多く行われていた。しかし、日本臨床腫瘍グループ(JCOG)によるJCOG9501試験で、進行胃癌に対する胃切除術の際にD2郭清を行う群とさらに予防的な拡大郭清を加える群を比較したところ、生存率に差がなかった。よって、予防的な大動脈周囲リンパ節郭清は行うべきではないと結論された。現在、日本の定型手術のリンパ節郭清はD2郭清が標準となっている。

●治療―化学療法

 切除不能進行・再発胃癌に対する化学療法の有用性はまず、無治療群よりも化学療法群の生存率およびQOLに関する成績が良好であったことから確認された。

 フェーズ3試験としては、米North Central Cancer Treatment Group(NCCTG)で5-FU、5-FU+ドキソルビシン(アドリアマイシン)、5-FU+ドキソルビシン+マイトマイシンCの3つを比較する試験が行われた。日本では、5-FU、5-FU+シスプラチン、5-FU+シスプラチン+マイトマイシンCの3つを比較するJCOG9205試験が行われた。両方の試験で、3群の生存期間に有意差はなく、併用療法でも単剤療法でも生存期間は変わらないという結果が示された。

 欧州では、5-FU+ドキソルビシン+メトトレキサートが1990年代初頭の標準的なレジメンだった。5-FU+シスプラチン、5-FU+エトポシドロイコボリン、5-FU+ドキソルビシン+メトトレキサートの3つを比較した試験では、3群の生存期間に有意差はなかった。このように世界共通の標準的な併用療法のレジメンは報告されなかった。

 2010年のNational Comprehensive Cancer Network(NCCN)のガイドラインでは、切除不能再発胃癌に対する化学療法のファーストライン治療として、5-FU+シスプラチン+エピルビシンおよび5-FU+シスプラチン+ドセタキセルが推奨された。欧州では、5-FU+シスプラチン+エピルビシンが推奨レジメンとなった。

 一方、日本の「胃癌治療ガイドライン」(2004年)には「フッ化ピリミジン(5-FUなど)とシスプラチンを含む治療が有望である」としながらも、「特定のレジメンを推奨できない」と明記された。

 2007年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)で、日本で行われたJCOG9912試験結果が発表された。これは、切除不能再発胃癌に対し、5-FUを対照に、イリノテカン+シスプラチン、テガフール・ギメラシル・オテラシルカリウム配合剤TS-1)を比較したもの。無増悪生存期間は、イリノテカン+シスプラチンが中央値4.8カ月と有意に延長し(p<0.001)、TS-1は4.2カ月、5-FUは2.9カ月だった。全生存期間は1年を超える時点まではイリノテカン+シスプラチンが良好であったが、その後TS-1と交差し、後半はTS-1が上回った(図)。最終的に、イリノテカン+シスプラチンは5-FUに対する優位性を示すことができず、一方のTS-1は5-FUに対する非劣性を示した。この結果から、TS-1が日本の進行胃癌の標準治療として位置づけられることとなった。

(画像をクリックすると拡大します)