腎癌腎細胞癌)の好発年齢は50歳〜70歳。10万人当たりの発症率は、男性が8.5人、女性が3.2人となっており、女性よりも男性の罹患者数が多い。喫煙や肥満、高血圧などが複合的に作用して発癌リスクを高めると考えられている。また、石油関連の化学物質やカドミウムなどの金属類などへの暴露もリスク因子となる。 加えて、長期の透析を受けている患者や、癌抑制遺伝子VHL遺伝子に変異がみられるVHL症候群でも、発症リスクが高いことが知られている。

 画像診断が発達した現在では、超音波検査やCTスキャンMRIなどで、無症状である初期の段階で、偶然に発見される腎癌が増えている。ただし現在でも、約2割の腎癌は転移後に発見されているのが現状だ。転移に伴う症状としては、肺転移の場合には咳や血痰、骨転移がある場合には病的骨折や骨痛、脳転移では痙攣、意識障害、頭痛などがある。また、検査値の異常としては、血沈亢進、CRP陽性、LDH、ALP値の異常、高カルシウム血症、貧血、多血症がある。

 腎癌の転移部位として最も多いのは肺だ。次にリンパ節、骨が続いている。膵臓や肝臓、皮膚などに転移することもあるが、これらの部位への転移は、かなり病状が進行した後となる。

 病理的学的分類では、腎癌で最も多いのは、淡明細胞癌(clear cell carcinoma)であり、約7割を占めている。

●治療の原則

 治療法は、病期診断(Robson分類、下表)に従い、原則は手術による摘出だ。腎癌の場合、転移がある場合でも、転移巣の摘出が可能と判断されれば転移巣+腎摘除手術を行う。

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 ただし、転移無しの症例でも、根治的腎摘除もしくは腎部分切除術後に、2〜3割が再発する。そのため、何らかの再発抑制策の確立が必要だが、現在までのところ、術後補助薬物療法による再発抑制効果は確認されていない。そのため、腎切除後の補助薬物療法の意義は未確立の状態だ。

 一方、遠隔転移のある症例においては、切除可能な単発転移は、腎摘除術と転移切除が標準治療となっている。切除不能な多発転移がある場合でも、全身状態が良好な場合には、原発巣の腎摘除術後を行い、その後に全身の薬物療法を行うことが標準治療となっている。手術不能な場合には、全身薬物情報が第一選択だ。

 従来、標準治療としては、インターフェロンα(IFNα)、インターフェロンγ(IFNγ)、IL-2が投与されていた。ただし、腎癌を対象とする新たな分子標的薬の開発が進み、腎癌の薬物療法が大きく様変わりしつつある。

●腎淡明細胞癌の発症メカニズム

 VHL遺伝子に変異を持つVHL症候群患者の約40%において、腎臓に淡明細胞癌が発症することが知られている。また、散発性の腎淡明細胞癌においても、8割以上の患者においてVHL遺伝子の欠損もしくは発現抑制があることが分かってきている。

 VHL遺伝子の変異が起こるとVHL蛋白質が正常に機能しなくなり、正常酸素状態下でも低酸素応答性の転写因子であるHIFαの分解が抑制され、蓄積する。そして、血管新生促進因子や増殖因子が恒常的に産生され、血管新生や細胞増殖が引き起こされると考えられる(下図)。

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 そのため、血管新生や腫瘍増殖に関連する成長因子、シグナル伝達経路を標的とする分子標的薬が新たな治療薬として注目を集めている。

 腎細胞癌を対象に検討された分子標的薬としては、血管内皮細胞増殖因子受容体(VEGFR)-2、血小板由来成長因子受容体(PDGFR)の機能を阻害し、最終的に腫瘍の増殖に必要な血管新生を抑制するスニチニブ、VEGFR-1、2、3、PDGFRβを阻害し、最終的に腫瘍の増殖に必要な血管新生を抑制するソラフェニブ、細胞の分裂や成長、生存における調節因子として機能するセリン・スレオニンキナーゼであるmTORを阻害するテムシロリムス、抗血管内皮細胞成長因子(VEGF)を認識する抗体医薬であるベバシズマブなどがある(下図参照)。

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