癌による死亡は年間約33万人で、日本における死因の第一位。その癌死のなかで一番多いのが肺癌である。2006年のデータでは肺癌の年間死亡数は約6万3000人、2003年には年間約5万8000人が死亡しており、毎年約1500人以上死亡数が増加している。今後も肺癌による死亡数の増加が予測されている。

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 上図は、20世紀の米国におけるたばこの消費量と肺癌死亡率(年齢調整後)を示したもの。一人当たりのたばこ消費量が増えると、20〜30年遅れて肺癌死亡率が増加することが示されている。一方、たばこの消費量が減ると、20〜30年遅れて死亡率が減少する。

 肺癌は、小細胞肺癌と非小細胞肺癌に分類され、肺癌の約85%を非小細胞肺癌が占める。非小細胞肺癌は、さらに腺癌、扁平上皮癌、大細胞癌、その他分類不能に分かれる。扁平上皮癌患者の95%以上、腺癌の75%が喫煙者であり、小細胞肺癌の97〜99%が喫煙者である。

 肺癌では、臨床的に縦隔リンパ節が明らかでないI期とII期が手術の対象となっている。明らかな縦隔リンパ節があるIIIA/IIIB期は化学放射線療法が治療の中心であり、悪性胸水を有するIIIB期、遠隔転移を有するIV期例は化学療法が中心となる。その他、臨床病期I/II期の診断で手術を行い、術後IIIA期へ病期が変更された場合には術後補助化学療法が考慮される。

 肺癌による症状が見られる場合、多くが切除不能のIII期、IV期の進行例である。その場合、化学療法もしくは化学放射線療法が治療の中心となる。

●進行非小細胞肺癌に対する化学療法の変遷

 手術の適応とならない進行非小細胞肺癌に対する抗がん剤治療の変遷は、第1世代、第2世代、第3世代(下表)がある。第1世代では有効性はほとんど示されず、第2世代の薬剤から、有効性が示されるようになった。

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 第2世代のレジメンは、我が国ではシスプラチン、ビンカアルカロイド、ビンデシンとマイトマイシンを追加する場合、しない場合があった。一方、米国ではシスプラチン+エトポシド、欧州ではシスプラチン+マイトマイシン+イホマイドが中心であった。日米欧における多施設共同研究の結果はほぼ共通しており、奏効率は約20〜30%、1年生存率が20〜25%程度となっている。

 1995年のBritish Medical Journalに非小細胞肺癌に対するシスプラチンを含む化学療法の延命効果についてまとめたデータが発表された。IV期では、ベストサポーティブケアの場合1年生存率は10%程度だが、化学療法により10%改善され、ほぼ20%程度になることが示された。化学療法に放射線治療を併用した場合は、放射線治療単独に比べシスプラチンを含む化学療法で2年生存率が4%改善された。術後補助化学療法については5年生存率が約5%改善したが、サンプル数が少なく有意な差には至っていない(下表参照)。

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また他の臨床試験から、化学療法によって患者のQOLが改善すること、癌に伴う症状の改善効果も示されている。そのため、IV期を中心とした進行非小細胞肺癌の治療の目的は、現在のところ延命と癌による症状の改善である。

 第3世代の抗癌剤であるパクリタキセル(PTX)、ドセタキセル(DOC)、ビノレルビン(VNR)、ゲムシタビン(GEM)、イリノテカン(CPT-11)は、我が国においては1999年には全て承認された(それぞれの作用機序は下表)。

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