静岡県立静岡がんセンター

――確かに、ほかの病気や事故による突然の死亡や障害に比べれば、その点は救いなのかもしれませんね。

 一瞬のうちに人生が途切れたり、人格を失ったりすることがないですからね。だからこそ自分が試されて苦しいともいえるんですが。生きる者は必ず死ぬという鉄則の基に、がんという病気になったことに最後には幸せを感じて逝かれる方も多いと思います。

――その幸せを感じられるようにサポートすることががん看護の目的だと。

 がんで悲惨な亡くなり方をする人もいらっしゃいます。そういった方に遭遇すると、的確なタイミングでがん看護が提供されていればもっと幸せだっただろうにと思います。

 緩和ケアは確かに重要ですが、がん看護はそれだけではありません。がん看護で最も重要なことは、まず情報提供です。予防段階から終末期までというがんの長い過程で、看護の実践者は、さまざまな情報を発信していかなければなりません。がんの予防とともに早期に発見できること、手術などによる新しい身体条件に適応すること、いくつかの治療から自分に最適な治療を選択できること、自分に合った療養の方法を選べるようになることなど、各段階で必要とされる情報があります。

 さらにがん看護のとても重要な役割として挙げられるのは、治療で副作用や合併症が起こった場合に最低限に抑えること、どの病期においてもがんの症状や苦痛を緩和すること、手術や放射線治療による身体機能の変化と身体のイメージを合わせてあげることなどです。

 がん治療はこの20年でとても進歩しました。そこにはもちろんがん看護の進歩も含まれます。がん看護の方向性を示すという意味で、静岡がんセンターの意義は大きいと思います。予防から終末期まで、すべてのがんの病期を対象として展開し、その普及にも力を入れてきました。また、多職種で取り組むがん医療の一翼としてのがん看護を展開しています。

スペシャリストの専門性を生かすのはジェネラリスト
――ほかのがん診療施設からもいろいろと聞かれるんでしょうね。

 多職種チーム医療の運営方法に関する質問や、看護師スタッフを実践研修に出したいという依頼など、さまざまな問い合わせがあります。一番多い質問はやはり緩和ケア病棟の運営についてでしょうか。

――緩和ケア病棟の運営は、どういった点が悩みになっているんでしょうか。

 スタッフ数、どんな専門性を持った看護師を配置するのか、(消化器、呼吸器など)ほかの診療科との連携など、いろいろとあります。でも、一番の課題はベッドコントロールですね。治療系の病棟のペースと緩和ケア病棟のペースは違うので、どうしてもベッドの運用に差ができてしまうのですが、全体の病院運営の中でこのペースの違いによる影響をいかに小さくするかという点ですね。

――静岡がんセンターでは全体としてうまく運営されている。

 うまくとは言い切れませんが、努力しています。

――具体的には、どういった対策が考えられるのでしょうか。

 看護の立場で言えば、専門性の高い看護師による効率的・効果的なケアを実践するということですね。例えば、治療法の解説や注意点についての説明などで、普通ならば患者さんに理解してもらうのに3日かかるとすると、専門性の高い看護師が行うことでそれを1日にできる。こういったことを実現するのが専門性なんです。

 ただし、効率化を目指す上で最も重要なキーパーソンは、これら多彩な専門ナースを的確にコーディネートできる、いわゆる“ジェネラリスト”の看護師です。ジェネラリストとは「この患者さんにはこのような看護師を呼べば効率的に問題を解決できる」などと判断できる幅広い知識と経験を持っている看護師のことです。