がん看護に尽力する各地の看護師にスポットを当てるこのコーナー。第1回は、「動画で学ぶがん看護」でご協力いただいている静岡県立静岡がんセンターの看護部長、青木和惠氏に、開設7年目となる同センターの現状などを聞いた。開設から7年以上が過ぎ、専門家の育成については道が開けてきた今、目下の課題は、専門家をうまく統括できるジェネラリスト・ナースの養成という。ロールモデルとなり得る人材がそろそろ頭角を現してくるのではないかと期待をかけている。(聞き手:石垣恒一)


あおき かずえ氏 1976年東京都立新宿高等看護学院を卒業し、国立がんセンター中央病院に入職。2002年静岡県立静岡がんセンターに入職し副看護部長。07年より現職。1987年聖路加国際病院ETスクール修了、98年WOC看護認定看護師認定、2003年金沢大学大学院医学系研究科保健学専攻看護学領域修士課程修了

――2002年の開設と同時に、静岡がんセンターに着任されました。

 静岡がんセンターで働きたいと思った決定的な理由は、月並みかもしれませんが、緩和ケア病棟の充実という方針を開設前から打ち出していたことです。発病してから亡くなられるまでの長い期間にわたり、ベストを尽くしてケアを提供できるという保証が得られたことに、がん看護に携わる者としてとても安堵感をおぼえました。患者さんから「(担当医師に)もう治療はできないので別の病院に通ってくださいと言われました。もうあなたにも逢えなくなりますね」と言われることがあり、医療者として無力感や寂寥感を感じていましたから。

 がん専門病院はいつもベッドが一杯なので、患者さんには厳しい状況でも自宅で療養していただくという実情はあります。しかし静岡がんセンターには、治療期のみではなく、治療ができなくなった終末期にも対応する機能があります。このことはがん看護の展開において非常に重要なことです。なぜならがん看護とは患者さんが長い道程を意思的に歩むための継続的な支援であり、途切れることはないからです。

 もっとも、病院が開院して医療が実際に走り出すと、問題はたくさんありました。例えば、緩和ケア病棟に入院したい終末期患者さんは、緩和ケア病棟の病床数よりもはるかに多いことなどです。

 でも、狭い道ならばそれを広げていけばいい。何よりもまず、道があるということが貴重なのです。

「良く生きる」ことをサポート

――こちらに着任されてからは、緩和ケアに力を入れてきたのでしょうか。

 がんは予防、発病、治療、適応といったプロセスを経て、治癒しない場合には死に至る病気です。つまり、いろいろな段階があり、その段階に適した医療や看護が必要で、緩和ケアはその中の一部です。ですから私は看護管理者としてそこだけを特別としてきたわけではありません。

 長いプロセスの中で患者さんは、パニックを起こすこともあるし、もちろん苦しみもします。しかしがんは、患者さんの人生、人となりを破壊する病気ではありません。確かに厳しい病気ですが、がんによって人格が変化したり、能力が低下したりすることはまれなのです。

 逆にがんを患った苦しみによって、患者さんは「人生とは何か?」「家族とは何か?」を考えるに至り、与えられた自分の人生を良く生きることを志すようになるのです。このことは、人格や能力を失わずに長い過程をたどる、がんという病気になった人に与えられる恩恵ともいえます。