喉頭温存を希望する場合の標準治療は化学放射線療法と認識されているが、局所治療の成績向上を求めすぎたため、治療後の発声や嚥下といった喉頭機能の障害が問題となっている。正常な機能の喉頭を残すことを目指した治療開発が今後の課題である。

●再発・遠隔転移頭頸部扁平上皮癌の治療

 頭頸部扁平上皮癌の再発・遠隔転移に対する抗癌剤単剤の効果は13〜40%である。ベストサポーティブケア(BSC)と抗癌剤単剤の比較試験でCDDP単剤による化学療法がBSCを上回り、CDDP単剤を上回る生存への寄与を期待してFP療法を主とした多剤併用療法の無作為化比較試験が多く行われている。しかし、CDDPをこえる報告はない。現在この領域の標準治療は確立されていないとされ、抗腫瘍効果が良好なFP療法が一般的に多く行われている。上皮成長因子受容体(EGFR)阻害剤のゲフィチニブやセツキシマブなどの単剤投与については、複数の試験が実施されたが、奏効率はいずれも10%前後で、良好とはいえない成績である。

 Eastern Cooperative Oncology Group(ECOG)が行ったフェーズ3のECOG5397試験では、CDDP単剤を投与する群とCDDPにセツキシマブを併用する群を比較し、セツキシマブの上乗せ効果を評価した。全奏効率は、CDDP単剤を投与する群の10%に対し、CDDPにセツキシマブを併用する群では26%で、セツキシマブの併用で有意に良好となった(p=0.029)。PFSおよびOSに有意差を見出すことはできなかったが、米食品医薬品局(FDA)は、この試験の結果から再発・遠隔転移例に対してCDDPとの併用についてセツキシマブを認可した。

 2007年のASCOにてヨーロッパ17カ国80施設で行われた遠隔再発頭頸部扁平上皮癌を対象としたFP療法とFP+ Cetuximabの無作為化比較試験(EXTREME study)の結果が報告された。全442例が登録され、PF療法にcetuximabを加えた群の全生存期間中央値は10.1ヶ月であり、PF療法単独群の 7.4ヶ月に比べて有意に優れており(ハザード比0.797, p=0.0362)、Cetuximabの生存への上乗せ効果が示された。生存においてPlatinum-basedの化学療法を上回る治療法がこれまで報告されてなかったことから、この結果は非常に注目された。この結果から、Platinum-basedの化学療法にcetuximabを併用することが転移再発頭頸部扁平上皮癌の新たな標準治療と認識されている。

転移再発頭頸部扁平上皮癌に対するCetuximabの効果
著者
(year)
Phase 対象 併用療法 N RR Median
PFS
(TTP)
Median OS
Baselga
(2005)
II Platinum
refractory
CDDP or
CBDCA
98 10% (85日) 183日
Herbst
(2005)
II Platinum
refractory
CDDP 25(PD/1)
54(PD/2)
51(SD)
20%
6%
18%
3.0カ月
2.0カ月
4.9カ月
6.1カ月
4.3カ月
11.7カ月
Buentzel
(2007)
II Platinum
refractory
PXL+CBDCA 23 56% 5カ月 8カ月
Burtness
(2005)
III First line CDDP
Placebo
58
58
26%
10%
p=0.03
4.2カ月
3.1カ月
p=0.09
9.1カ月
8.0カ月
p=0.21
Vermorken
(2007)
III First line FP+Cetuximab
FP
222
220
35.6%
19.5%
p=0.0001
  10.1カ月
7.4カ月
p=0.0362



 これまで頭頸部癌は進行した状態で発見されるケースが多く、重複癌も少なくないため予後が不良で、治療による発声や嚥下、咀嚼などへの影響からQOL低下が顕著な癌と受け止められていた。しかし最近では、分子標的治療薬の開発を含め、集学的治療による治療成績の向上も期待できるようになってきている。各治療法のエビデンスの集積が待たれる。