ただし、欧州と米国ではHigh risk群の定義が異なっている。両試験の共通する因子は「切除断端陽性」と「節外進展を認める」の二点のみであった。この二つの因子を集めたサブセット解析では、両試験ともに生存のベネフィットが化学放射線療法群にあることが示された一方で、その他の因子については化学放射線療法のメリットは少ないことも示された。

 このことから、術後化学放射線療法のメリットが最もあるのは、「切除断端陽性」あるいは「節外進展を認める」High risk群と認識されている。

●局所進行頭頸部(中咽頭・喉頭・下咽頭)扁平上皮癌の治療−切除不能例

 切除不能局所進行頭頸部癌に対する放射線療法単独群と化学放射線療法群を比較する複数の試験において、CDDPを用いる化学放射線療法群が局所制御率、生存率において優れていることが示され、標準治療と考えられるようになった。

 放射線療法と併用するレジメンのメタアナリシスでは、白金系抗癌剤とFP療法で有意に良好であった。ただし、CDDP単剤を上回るレジメンが出ていないため、欧米ではCDDPが標準治療と考えられている。日本ではFP療法が一般的に行われている。

 2004年の米国臨床腫瘍学会(ASCO)では、ステージIII、IVの局所進行頭頸部扁平上皮癌を対象に、放射線療法単独群と放射線療法とセツキシマブを併用する群の比較試験の結果が発表された。セツキシマブを併用する群で局所制御率、生存率が良好であった(下図)。生存の上乗せ効果を示したこの報告は注目を集めたが、ステージIII、IVの局所進行頭頸部扁平上皮癌の標準治療は化学放射線療法であるため、対照を放射線療法単独群としたことへの批判も出た。放射線療法にセツキシマブを併用する治療は新たな標準治療とはいえず、化学放射線療法が行えない場合に限定するべきと考えられている。

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●局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入化学療法

 局所進行頭頸部扁平上皮癌に対する導入化学療法として行われているFP療法は、奏効率85%、完全奏効率40%と高い抗腫瘍効果を示し、ダウンステージングが期待できるとして、外科的切除や放射線療法の局所治療前に行われてきた。しかし、局所治療単独群と導入化学療法群の比較試験はほとんどがネガティブな結果であった。局所治療への化学療法の上乗せ効果を検討したメタアナリシスでも、導入化学療法に上乗せ効果はないことが示された。

 それでも導入化学療法が廃れないのは、化学放射線療法の毒性を憂慮する医師が少なくないためである。特に欧州では導入化学療法が多く行われ、複数の臨床試験が進行中だ。

 2004年と2006年のASCOでEORTCから発表されたTAX323試験では、切除不能な扁平上皮癌を対象として、導入化学療法としてドセタキセル+CDDP+5FU(TPF)、またはFP療法を行い、その後全例に局所治療として放射線療法を行った。その結果、PFS、OSともにTPF療法群で有意に良好であることが明らかになった(下図)。しかしこの試験では、TPF療法群のOSが18.6カ月と20カ月を切っており、これまでに報告された化学放射線療法と同等以下という結果のため、局所治療が放射線療法単独である点が批判された。

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 またTAX324試験は北米と南米を中心に行われ、2006年のASCOで結果が発表された。この試験では導入化学療法としてTPF療法またはFP療法を行い、その後の局所治療はカルボプラチンを用いる同時化学放射線療法とした。その結果、PFS、OSともにTPF療法群で有意に良好となった(下図)。

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