日本の頭頸部癌の罹患率および死亡率は近年増加しており、特に口腔・咽頭の癌の罹患率は男女ともに約2倍に増加しているとの報告もある。咽頭癌は男性で増加しており、女性では横ばいとなっている。

 1335例を対象とした2001年度日本頭頸部癌学会による頭頸部悪性腫瘍全国登録によれば、頭頸部癌の組織型は扁平上皮癌が全体の90%以上を占めていた。そのため、治療は扁平上皮癌を中心に研究されてきた。そのため他の組織型ではほとんどエビデンスがない状態だ。

 「頭頸部癌取扱い規約」(2005年、改訂第4版、日本頭頸部癌学会/編)によると、頭頸部癌の原発腫瘍の対象となる部位は、口唇および口腔、鼻腔および副鼻腔、上咽頭、中咽頭、下咽頭、喉頭、唾液腺、甲状腺である。

 原発腫瘍はT分類で表し、口唇および口腔を例にとると、Tisは上皮内癌、T1は最大径が2cm以下の腫瘍、T2は最大径が2cmをこえるが4cm以下の腫瘍、T3は最大径が4cmをこえる腫瘍である。T4は骨髄質、下歯槽神経、口腔底、皮膚に浸潤する腫瘍で、舌深層の筋肉や外舌筋、咀嚼筋間隙、頭蓋底などへの浸潤によりT4aとT4bに分かれる。

 所属リンパ節はN分類で表す。口唇および口腔の所属リンパ節は頸部リンパ節で、N1は同側の単発性リンパ節転移で最大径が3cm以下、N2はこの最大径が3cmをこえるが6cm以下、または同側の多発性リンパ節転移で最大径が6cm以下、または両側あるいは対側のリンパ節転移で最大径が6cm以下の場合である。N2はリンパ節転移の数と最大径によりNa2からN2cの3段階に分類される。N3は最大径が6cmをこえるリンパ節転移である。

 頭頸部癌のステージ別の頻度をみると、ステージIIIとIVで全体の約60%に上り、局所進行癌が多いことがわかる。ステージIIIは、T1またはT2でN1の場合、あるいはT3でN1までの場合である。ステージIVは、IVAがN2かつT3あるいはT4aの場合である。IVBがNに関係なくT4bの場合、あるいはTに関係なくN3の場合で、IVCがT、Nに関係なくM1の場合である。

 頭頸部癌の病態や発生頻度、予後は、口腔や鼻腔などの亜部位により異なる。発生頻度が高いのは口腔癌で、頭頸部癌全体の35%以上を占める。喉頭癌、下咽頭癌がこれに続く。

 発症要因で知られているのは飲酒と喫煙で、頭頸部癌全体の約80%に関与しているといわれる。上咽頭癌ではエプスタイン・バー(EB)ウイルス、中咽頭癌と口腔癌ではヒトパピローマウイルス(HPV)感染も関与し、亜部位により発症要因が異なる。

 米国国立癌研究所(NCI)のデータによると、最も予後が良いのは上咽頭癌で、下部になるほど予後は不良となり、下咽頭癌が最も不良である。

 このように頭頸部癌は亜部位により発症要因や予後が異なることから、上顎洞癌、上咽頭癌、口腔癌、中咽頭癌・喉頭癌・下咽頭癌に分けて治療の開発が行われてきた。

●上顎洞癌の治療

 上顎洞癌は初期に症状が出現しにくく、約80%は初診時にT3、T4の局所進行癌となっている。欧米の標準治療は外科的切除後に放射線療法を行うことであり、5年生存率は36〜51%と報告されている。これに対し日本では、動注化学療法を中心に減量手術と放射線療法を併用する三者併用療法が一般的である。5年生存率は42〜70%と良好な成績であるが、外科的切除との比較試験の報告がなく、エビデンスレベルとしては低い状況にある。

●上咽頭癌の治療

 上咽頭癌は解剖学的に外科的切除が困難な部位であるため、ステージI、IIでは放射線療法、ステージIII、IVでは化学放射線療法が標準治療となっている。

 上咽頭癌の組織型はWHOの分類によると、Type Iは角化傾向のある扁平上皮癌、Type IIは角化傾向のない扁平上皮癌、Type IIIは未分化癌とされる。上咽頭癌は疫学的に中国南部に多く、この地域の上咽頭癌は風土病とも呼ばれる。北米では上咽頭癌の約25%がType Iであるが、中国南部ではほとんどがType IIIの未分化癌である。化学療法、放射線療法との感受性は組織型で異なり、Type Iは不良、Type II、IIIは良好である。そのため中国南部に多い上咽頭癌の予後は比較的良好と考えられる。

 欧米で実施されたIntergroup Study(INT)0099では、ステージIII、IVの上咽頭癌を対象とし、放射線療法単独群とシスプラチン(CDDP)を用いる化学放射線療法を施行後に5FU+CDDPによる化学療法(FP療法)を行う群を、フェーズ3の無作為化試験で比較した。化学放射線療法群で無増悪生存率(PFS)、全生存率(OS)ともに明らかに優れていることがわかった(下図)。この試験の結果から、欧米では上咽頭癌の標準治療は化学放射線療法とされている。

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