大腸癌に罹患する日本人は増加しており、現在は年間10万人を超えるとされる。大腸癌では、癌の部位別死亡率や罹患数は直腸結腸に分かれて集計されていることが多いため、一見すると頻度は高くないと考えられがちだ。しかし、直腸と結腸を合わせた2005年の大腸癌の部位別死亡率は男性では4位、女性では1位である。2020年の癌罹患に関する推計では、大腸癌は男性では2位、女性では1位となるとみられている。

 「大腸癌取扱い規約」(2006年、第7版、大腸癌研究会編)では、大腸癌の壁深達度は、漿膜を有する部位では、癌が粘膜内にとどまり粘膜下層に及んでいないM、癌が粘膜下層までにとどまり固有筋層に及んでいないSM、癌が固有筋層までにとどまりこれをこえていないMP、癌が固有筋層の表面を越えているが漿膜表面に出ていないSS、癌が漿膜表面に露出しているSE、癌が直接他臓器に浸潤しているSIに分類される。一般に肺や肝などへの転移を認め、手術不可能なステージIVの癌は化学療法の適応となる。また、大腸癌ではDukes分類が予後と密接に相関し、遠隔転移がある「D」のカテゴリーに含まれる癌は治療成績が不良である(下図)。

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●検査

 大腸癌のスクリーニング(拾い上げ)のための検査としては、便潜血検査注腸造影検査大腸内視鏡検査が挙げられる。確定診断の中心は大腸内視鏡検査で、生検で組織を採取し、壁深達度などを診断するほか、同時に治療を行うこともある。その他、腫瘍マーカー(CEA、CA19-9など)の測定、超音波検査や超音波内視鏡検査、CT、MRI、PETなどの画像診断が行われる。

●手術療法

 早期大腸癌では、SM深部浸潤癌の場合は外科切除、M癌またはSM軽度浸潤癌で内視鏡的に切除が可能と判断される場合は内視鏡切除を行う。内視鏡切除後の病理診断でリンパ節転移の確率がゼロに等しいと考えられる場合は経過観察とし、リンパ節転移の可能性が考えられる場合や内視鏡では切除不可能だった場合には外科切除を行う。

 M癌ではリンパ節転移の可能性はほぼないと考えられる。SM癌でリンパ節転移の頻度がこれに等しいのは(1)内視鏡切除後の病理診断が垂直断端陰性(2)高・中分化腺癌(3)深達度が1000μm未満(4)脈管侵襲陰性――のすべてを満たす場合で、内視鏡切除により根治可能と考えられる。しかし、それ以外のSM癌ではリンパ節転移の頻度が10〜15%あることから、原則として外科切除を行う(下図)。

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 結腸癌、直腸癌ともに外科切除の術式は多く、深達度などによってリンパ節の郭清範囲が異なる。さらに、1990年代前半から腹腔鏡下手術が日本でも行われるようになった。また、肛門を温存できる内肛門括約筋切除術(ISR)など、QOLを考慮した術式も開発されている。

●切除不能・再発大腸癌に対する化学療法

 大腸癌の治療成績向上を図るうえで、5年生存率が低いステージIVの成績を上げることは重要だ。ステージIV大腸癌に対する化学療法の意義は、5-FUと支持療法(BSC)を比較した試験で初めて証明された。生存期間中央値はBSC 5カ月に対し、5-FUでは11カ月となり、5-FUの投与で有意に延長していた(p=0.006)。この結果は、1993年の「British Medical Journal(BMJ)」誌に掲載された。

 その後、大腸癌に有望な多くの薬剤が開発され、米国ではイリノテカン、カペシタビン、オキサリプラチン、セツキシマブ、ベバシズマブ、パニツムマブなどが承認された。日本では、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチンが承認された後、2007年にはカペシタビンとベバシズマブ、2008年にセツキシマブが承認され、2010年にパニツムマブが承認される。

 2005年には、5-FU、イリノテカン、オキサリプラチンの3剤を使う割合が高かった試験ほど、患者の生存期間が延長したというメタアナリシスの結果が示されている。3剤を使い切った場合の生存期間は約21カ月だったが、その後、分子標的薬のベバシズマブとセツキシマブの導入により、25カ月を超えるところまで期待が持てるようになっている(下図)。

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