食道癌は一般的に高齢者に多くみられ、患者は何らかの臓器障害を合併している場合が多い。2007年度の癌の部位別死亡率では、食道癌は全体の第7位、男性の第6位を占めている。2001年度の年齢調整死亡率は、人口10万人当たり男性10.5人、女性1.3人である。

欧米では近年「腺癌」が急増して全体の約70%を占めているのに対し、日本では腺癌も増加傾向にあるとはいえ、依然として「扁平上皮癌」が90%以上を占めている。

 「臨床・病理 食道癌取扱い規約」(第10補訂版、2008年、日本食道学会/編)によると、食道癌の壁深達度はT分類で記載し、T0は原発巣としての癌腫を認めないもの。T1aは癌腫が粘膜内にとどまる病変で、粘膜上皮内にとどまるEP(Tis)から粘膜筋板に達するMMまで、3段階に分かれる。T1bは癌腫が粘膜下層にとどまる病変、T2は固有筋層にとどまる病変、T3は食道外膜に浸潤している病変、T4は食道周囲臓器に浸潤している病変である。

 リンパ節転移の程度はN分類で記載し、N1は第1群リンパ節のみ、N2は第2群リンパ節まで、N3は第3群リンパ節まで、N4は第3群リンパ節より遠位のリンパ節(第4群)にも転移を認めるものである。手術でリンパ節をどの範囲まで切除(郭清)するかについて、D1は第1群リンパ節のみ、D2は第1群および第2群リンパ節、D3は第1群、第2群および第3群のリンパ節郭清を行うことを指す。

 2009年、国際標準であるUICC-TNM分類の第7版が出版され、リンパ節の転移個数や食道の部位別に予後が異なることを反映した分類が新たに提唱された。将来的に、日本の取扱い規約に反映される可能性もあるので、気に留めておきたい。

●術前・術後化学療法の変遷

日本では、ステージI〜IIIの食道癌に対しては手術療法が標準治療となっている。以前は、化学療法を加えるかどうか、また根治的な化学放射線療法や術前化学放射線療法を行うかどうかについては明確な位置づけがされておらず、術後化学療法が多く行われてきた。

これに対し、エビデンスを示したのが日本臨床腫瘍研究グループ(JCOG)のJCOG9204試験だ。この試験では、手術単独群と術後にシスプラチン(CDDP)+5FUによる化学療法(FP療法)を行った群を比較した。生存割合に差は出なかったものの、無再発生存割合はFPによる化学療法群で有意に上昇し(p=0.037)、この結果から日本では術後化学療法はFPの2コースの投与が標準治療と考えられた(下図)。

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 サブグループ解析では、リンパ節転移を認める場合は術後化学療法による無再発生存割合の上昇が顕著だったが、リンパ節転移を認めない場合には有意差がみられなかった。この結果から、手術時のリンパ節郭清の精度が高い日本では、術後化学療法は再発予防に寄与するものと考えられた。

 この結果を受けて行われたJCOG9907試験では、ステージII、IIIの食道癌に対するFPによる術前化学療法の有効性が明らかになり、術前化学療法が新たな標準治療となる可能性が示された。

 JCOG9907試験ではFPを2コース、術前または術後の化学療法として投与し、効果を比較した。無増悪生存期間(PFS)について、術前化学療法群の術後化学療法群に対するハザード比(HR)は0.758、log rank p=0.0444で、中止基準のp=0.02544には到達しなかった。しかし、全生存期間(OS)において術前化学療法群が有意に良好であったため(HR=0.638、両側p=0.0140)(下図)、効果安全性評価委員会は早期中止を勧告した。重篤な有害事象の発現は認められなかった。

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